それでも、洋食化もあって米余りは続いており、他作物への転換を優遇する制度は現在も残っている。また、海外から市場開放の圧力が高まり、先述の通り、1995年のウルグアイ・ラウンド農業協定で米100%自給に小さな穴があいた。

 この制度は、関税引き下げを目指したウルグアイ・ラウンドのパッケージの中で、工業製品などで米国などが要求する日本に不利な要求をのんだ代償に認められたもので、そういう意味では、日本産業没落の原因の一つになった。

 そして、「無税のミニマムアクセス+禁止的高関税」というのは、「その場しのぎ」としては知恵を絞った優れものだったが、いつまでも不自然な状況を続けられると思うのは間違いだった。

深刻な米不足の原因である
自給政策は転換すべき

 米不足は1993年と今回との2度起きている。1993年は東北地方の冷害によるもので、今回は2023 年夏に良質米が一時的に不足したことが秋以降になっても戻っていないのが原因だ。

 とはいえ、米が本当に不足しているはずはない。いわばオイルショック時のトイレットペーパー不足騒ぎみたいな状況だから、今後、暴落する可能性も高い。

 米の国際価格はやや高めだが落ち着いており、輸入すればいいと普通は思う。しかし、日本が輸入を厳しく制限しているため、海外では日本人の好む単粒米(ジャポニカ)の生産は少ないし、長粒米(インディカ)は1993年の米不足時に輸入したものの、日本人に嫌われて余っていた(現在であれば、エスニック料理が普及したから違うかもしれないが)。

 つまり、日本の米市場は、価格弾力性に欠け、国内で良質米が不足するとたちまち高騰するという構造にある。

 これを解消しようとすれば、根本的には米消費量の何割かを輸入で賄い、国産米が不足したら輸入が増えるようにすることが王道だ。米の自給政策が1993年時と今回の深刻な米不足の原因になっているからだ。