今後の株式市場は、リーマンショックやコロナショックとは違う道をたどる可能性がありそうだ。ここ20年は、国際協調体制がワークし、グローバルに連携していた。しかし今、各国は連携しているだろうか?誰かイニシアティブを取って連携を呼びかけるだろうか?

 もちろん部分的な連携はあるだろうが、米国以外の各国が全て連携して対米交渉するとは想像しにくく、基本は個別交渉になるだろう。仮にトランプが手のひらを返せば、市場は元の世界に戻るかもしれないが、疑心暗鬼は残る。要は米国次第だ。

 そして、グラフでも示したように米国の覇権国としての姿が変われば、株価の傾き≒リターンが変わる可能性もリスクシナリオとして念頭に置いておく必要がある(もっとも当面、覇権そのものが他国に移ることはないだろう)。

 もう1点気になるのが、株価下落にもかかわらず大幅な円高にはなっていないことだ。その理由として、下記が挙げられる。

・日本企業の海外投資が増加し、かつ利益を円に換える動きは少なくなっていた。
・わが国のデジタル収支赤字(海外のITソフトウエアなどの購入額)は巨額で(24年で6兆~7兆円の赤字)、為替ドル/円の需給構造はそもそも変化している。
・資源の乏しい日本は、エネルギーや食料を輸入し続ける必要がある。

 今回のトランプ関税が発動しても、日本企業は対米投資をやめるどころか、むしろ増やせと言われている。また、ITソフトウエアの購入なしには活動できない。

 ドル円の構造的な変化が、現在さほど円高になっていない理由と思われ、今後も円安基調は続く可能性がある。すると株価が下がり景気が悪化しても、輸入品価格は下がらずインフレ傾向が続くかもしれない。

 日本が残された道は、国内の稼ぐ力をもう一度取り戻すことに尽きる。それと同時に、外交の重要性を再認識するときだと思う。日本人は国際秩序の変化に疎いが、もっと自分事としてとらえないと、ますます日本は貧しくなっていく。個人が自立しつつ連携すること、諸外国とは新しい形で共存の道を探ることが必要なはずだ。

(YODA LAB代表 養田功一郎)

もしトランプが“正常”なら...関税の次の狙いは米富裕層「大企業買い」にチャンス到来写真はイメージです Photo:PIXTA