そもそも米国は建国以来、分裂と紛争を繰り返してきた国だ。南北戦争といえば奴隷解放が連想されるが、実質的には農工業の自由貿易を目指す南部と、保護主義を求める北部の戦いでもあり、リンカーン率いる北部が勝利した。

 そして第一次世界大戦を経た後も、米国は自国の利益を守ることを優先していた。保護主義の時代であり、まだ世界の覇権国ではなかった。

 米ドルが基軸通貨になり、自由貿易によって米国が今の形になったのは、1944年のブレトンウッズ体制(※1)や、71年のニクソンショック(※2)以降と言ってもいい。その後、米国は通貨を発行することで、購買力を武器に経済発展した。グラフを見ると分かるとおり、世界大恐慌以降のダウ平均株価リターンは7%程度となっている。

(※1)「米ドルを基軸とした固定為替相場制」であり、「金1オンス35USドル」と「金兌換(だかん)」によって米ドルと各国の通貨の交換比率(為替レート)を一定に保つことによって自由貿易を発展させ、世界経済を安定させる仕組み。
(※2)固定比率(金1オンス=35ドル)による米ドル紙幣と金の兌換を一時停止。金本位制ではなくなったが、引き続きドルは経済力、軍事力、金融システムの面で基軸通貨であり、ゴールドの裏付けなしにドル紙幣を発行できるようになった。

 貿易赤字は膨らんだが、それでも持続可能だったのは基軸通貨国であるゆえんだ。しかしリーマンショック、コロナショックを経て、ドルというマネーが過去のトレンド以上に増え過ぎているように思う。