ヘルパーが来ない!
訪問介護の現場で異変
住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを最期まで続けられるように高齢者の生活を支えるのが、介護保険制度の在宅介護サービス。在宅介護の中心的な役割を担う「訪問介護」は、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの「身体介護」と、掃除・洗濯・買い物・調理といった「生活支援」を行う。通院などを目的とした乗車や移送、降車の介助サービスを提供する事業者もある。
その訪問介護の現場で異変が起きている。
「ヘルパーのサービスを受けるのに1カ月待ちになっている」と、現場の窮状を語るのは、社会福祉法人千葉勤労者福祉会介護部長の門脇めぐみさん。
「とにかくヘルパー不足で、引き受けてくれるヘルパーさんが見つからないのです。特に軽度者向けの生活支援は厳しい状況です。私たちが運営する訪問介護サービスの事業所は2カ所あり、あわせて約80人のヘルパーがいますが、平均年齢は60歳近くで最高齢は80歳。20代ゼロ、30代は1人。求人を出しても紹介事業所に頼っても地域に訪問するヘルパーを希望する人は、一人も確保できていないのが現状です」(門脇さん)
80代以降になると、生活の中で「できないこと」が増えてくる。例えば、スーパーで買い物した後、荷物が重くて持ち帰ることができない。あるいは、部屋を掃除するために掃除機をかけても、重くて動かせない。洗濯をしても物干し竿まで手が届かない。このように枚挙にいとまがない。いつまでも自立した生活を送るために「生活支援」は欠かせない。
訪問介護の事業所をとりまく経営環境は困難を極めている。新型コロナがようやく5類に移行したと思ったら、物価や光熱費上昇など維持費がかさむ。ギリギリの中でやりくりしている事業者も少なくない。そこにきて追い討ちをかけるのが「介護報酬の改定」だ。