では、政府は何のためにこのような儀式を行ったのでしょうか。端的にいえば、言葉は悪いですが印象操作でしょう。
現在の“構造的な欠陥”をかかえたルールのもとで秋篠宮殿下が皇嗣とされているのは、あくまでも暫定的にそうなっているにすぎないということ。その“暫定性”を覆い隠して、あたかも次の天皇として即位されることが確定したかのようなイメージを一般の国民に与えることが目的だったとしか、考えられません。一種の心理的なトリックですね。

そのようなイメージづくりに成功すれば、どうなるか。今の欠陥ルールを根本的に見直すという、絶対に避けて通れないはずの手続きが、逆に既定の事実をひっくり返す暴挙のような印象を与えることになります。現に「今の皇位継承順序をゆるがせにしてはならない」という思い込みが、政界に広く行き渡っているようです。まったく政府のねらい通りです。
しかし傍系の皇嗣は、どんな儀式をやってもやらなくても、あくまでも皇嗣でしかありません。その事実をまず確認しておきましょう。
その直系の皇太子と傍系の皇嗣の違いは、皇室典範の規定にはっきりと映し出されています。それは意外な事実かもしれませんが、皇嗣について皇室典範は「皇籍離脱」の可能性を認めているということです。すなわち「やむを得ない特別の事由があるときは」傍系の皇嗣なら皇族の身分を離れるケースがありえる、というのが皇室典範が定めるルールです(第11条第2項)。
次の天皇として即位されることが“確定”しておられる立場なら、このような規定が設けられるはずがありません。現に、「皇太子」および、皇太子が不在で天皇のお孫さまが皇位継承順位が第1位なら「皇太孫」と言いますが、その皇太孫については除外することが明記されています。
これが皇太子(皇太孫)と皇嗣の違いです。