一方、天皇陛下にはお子さまがいらっしゃいます。お健やかでご聡明…というレベルを超えた、光り輝くような皇女の敬宮(愛子内親王)殿下です。にもかかわらず、今の皇室典範のルールでは皇位継承資格をお持ちではありません。その理由は、ただ「女性だから」というだけです。

 皇位継承資格を男系男子に限定するミスマッチなルールが(うっかり?)今も維持されています。そのために、天皇陛下のお子さまであっても、敬宮殿下には皇位の継承資格が認められません。なので皇太子になれないのです。

 このように、令和の皇室には皇太子が不在です。果たしてこのような状態のままでよいのでしょうか。それを判断するために必要な事実を、これから紹介したいと思います。

 まずは皇太子と傍系の皇嗣の違いについて。皇太子は、次の天皇として即位されることが確定した立場です。それに対して傍系の皇嗣は、あくまでもその時点で皇位継承順位が第1位であるにすぎません。実際に、先ほど触れたように秩父宮が一度は皇嗣だったものの、即位することなく皇嗣の立場を離れられた事実があります。

 これは理論的、一般的に考えても、分かりやすいはずです。傍系の皇嗣がおられても、その後に直系の男子がお生まれになれば、とくに制度を変更しなくても、その時点で皇位継承順序が変わります。

 直系優先の原則があるので、第1位は当たり前にそちらのほうに移ります。直系の皇太子の場合は“優先される側”なので、当然ながらそのような順序の変更は論理上も決して起こりません。これは重大で決定的な違いです。

「皇太子」と「皇嗣」の
決定的な違いとは?

 この点を頭に入れておくと、過去に皇太子という確定的な立場を内外に宣明される「立太子の礼」という儀式はあっても、皇嗣という暫定的な立場を宣明する「立皇嗣の礼」がなかったことが、当たり前のこととして理解できるはずです。

 ところが、政府は無理やり立皇嗣の礼という前代未聞の儀式をこしらえて、内閣の助言と承認(=内閣の意思)に基づく国事行為として、実施しました(令和2年=2020=11月8日)。

 もちろん、これによって次の天皇として即位されることが確定するわけではありません。傍系の皇嗣はどのような儀式を行っても皇嗣のままです。立皇嗣の礼は、どこまでも暫定的に「皇嗣」である事実を改めて表明する儀式にすぎないのですから、当然です。