「どうすれば、お客様に覚えてもらえるのか…」
営業パーソンにとって、お客様に「覚えてもらう」ことは死活問題。「前に会いましたっけ?」「すみません、なんの話でしたっけ?」なんて言われてしまうような「その他大勢の営業」では、結果はおろか、信頼関係さえ構築できない。
「お客様の“記憶に残る”ために必要なことがあります」。そう語るのは、『Sales is』を執筆した今井晶也氏と、記憶に残る人になるを執筆した福島靖氏だ。お客様の「記憶に残る」ことを心がけたことで圧倒的な成果を出した営業のプロによる対談でわかった「お客様の記憶に残る営業」の真髄に迫る。

商談前に相手を「徹底的に調べる」のは二流。では、お客様に選ばれる「一流」はどうしている?Photo: Adobe Stock

あえてお客様のことを「調べない」

――商談の前に、どのような準備をしていますか?

福島靖(以下、福島) 基本的に僕は相手の企業のことは何も調べずに商談に臨みます。

今井晶也(以下、今井) それは意外です! 「ちゃんと調べてこい!」と、怒られたりしないですか?

商談前に相手を「徹底的に調べる」のは二流。では、お客様に選ばれる「一流」はどうしている?『Sales is』今井晶也著(扶桑社刊)

福島 会っていきなり「御社のことを教えてください」では失礼になりますが、ここまでに話してきたような第一印象作りや自己紹介をして、僕のことに興味を持っていただいた後であれば、怒られるようなことはありません。

今井 まずはお客様に興味を持っていただき、向こうから質問をしていただいた後なら、次にこちらがお客様に質問するのも自然な流れですね。

福島 そうなんです。

 それに事前の知識がない方が、お客様から「じつはうちの会社、最初は屋台から始まったんだよ」とか言われたら「えーっ!!」て自然に驚けます。前もって調べていたら、このリアクションも演技になってしまいますよね。予定調和になって話も盛り上がりませんし、話が盛り上がらない商談は失敗します。なので僕は、あえて丸腰でいくんです。

「セオリー」なんて無視していい

今井 最初に自分に興味を持ってもらえれば、あとは自然体で問題ないということですね。

福島 はい。覚えてきた知識やセリフを披露するよりも、より臨場感のある会話になって意気投合できると思います。

 うまく会話することよりも、どうすれば自分に興味を持ってもらえるか、そのためには何を伝えるか、そのことをどうやって相手から聞いてもらうか、そればかり考えています。

今井 これまで何人もの方と営業の悩みに答えてきましたが、そんな回答は初めて聞きました。セオリーどおりにする必要ってないんですね。

福島 会社としては、業務を仕組み化したりテンプレ化したりして、誰でもできて誰でも結果を出せるようにしていかないといけませんよね。ですからセオリーが存在する意義もわかります。

 でも、まるで量産型のような「替えのきく人間」になりたい人って、おそらくいないと思うんです。

自分だけの「Why」から、魅力が生まれる

今井 みんな誰かの特別になりたいし、「あなただから頼んだよ」って言われたくて仕事しているはずですよね。

 そのためには、テクニックといった「How」から入るんじゃなくて、「なぜ私はこれを売るのか」「このお客様に会いにいくのか」という「自分なりのWhy」を見つけることが大切ですね。

福島 はい。その「自分なりのWhy」や、そこから生まれた行動が自分だけの魅力となって、お客様から「選ばれる理由」になるんです。

(本稿は、営業職の情報プラットフォーム“YEALE(エール)”企画によるトークセッション形式のイベント「セールスハッシュタグ」で行われた、『記憶に残る人になる』の著者・福島靖氏と『Sales is』の著者・今井晶也氏の対談をもとに構成したものです。YouTube(2B Sales チャンネル)から、対談の動画も視聴できます)