「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「コミュニケーションの問題が生じやすい質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

「ちゃんとやった?」はよくない質問
皆さんは、自分の部下や後輩、もしくはお子さんにこのように質問していないでしょうか。
これは質問というよりは確認に近い問いかけですが、実際この「ちゃんとやった」という問いかけは、非常によくない言い方です。
何が良くないのかというと、自分と相手の解釈のズレを引き起こしてしまう危険性があるという点です。賢い人は、このようには聞きません。
今回はこの質問が思い込みや解釈のズレを引き起こしてしまう要因について説明していきましょう。
「ちゃんと」の意味は人によって違う
例えば、あなたの配偶者が、あなたに次のように言ってきたとします。
そこであなたはしぶしぶ、洗い物を始めました。洗剤を食器につけて拭いて水で洗って、乾かすために置いておきました。よし、仕事が終わったと思ってソファーでくつろいでいると、配偶者が次のように言ってきました。
あなたも少なからずこのような経験があるのではないでしょうか。
では、どうしてこのようなことが起きるのでしょうか? それの原因は、「ちゃんと」という言葉にあります。
「ちゃんと」が解釈のズレを引き起こす
そもそもですが、「ちゃんと」とはどういう意味でしょうか。おそらくこれに厳密に答えられる人はいないのではないかと思います。もちろん辞書的な意味はありますが、実際は「ちゃんと」の基準は人によって違うことが多いです。洗い物で言えば、食器を置いて乾かしている状態までやれば、「洗い物は一旦、ちゃんと終わった」と思う人もいれば、「食器を全て棚にしまってはじめて、“洗い物が終わった”」とみなしている人もいるわけです。
ここで生じているのが、解釈のズレです。
「ちゃんと」というのは、実は互いの解釈のズレを引き起こす危険な言葉です。相手と自分で「ちゃんと」の意味が違うので、ここでコミュニケーションのズレが起きてしまうのです。
「ちゃんと」の他にも、「いつも」や「しっかり」などといった一般化された言葉は、どれも解釈のズレを引き起こす可能性があるため、人とのコミュニケーションに使うと、よくない結果につながりがちです。
こんなときに、「事実」に絞った対話をすることがとても重要です。良い人間関係は、良いコミュニケーションから始まります。そして、良いコミュニケーションは良い問いかけから始まるのです。
(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する書き下ろし原稿です)