経営者には読書家の人が多いですが、経営者の人たちが経営に役立つ知識を経営者の本だけから学んでいるとは到底思えません。

 特に一流の経営者ともなると、仕事で参考にすべきお手本がどんどんなくなっていきます。

 それでも膨大な本を読み続けている。乱読している。ということは、自分より若い人や異業界の人の本、あるいは歴史学や、場合によっては物理学の本なんかからも学んだ知識を仕事に生かしているわけです。

身に付けるべきは
読んだ本を役立たせるスキル

 すぐに役立つか、役立たないか。

 この尺度だけで学んでいると、学びは限定的なものになります。

 肝となるのは、「役立たせるスキル」です。

「何を読むか」ではなく「どう読むか」で、「その本を役立たせるスキル」が高まれば、学びの機会は圧倒的に増えます。どこからでも誰からでも学べるようになるのですから鬼に金棒です。

 実際、ビジネスのアイデアなんてどこに転がっているのか、本当にわかりません。

 起業家の本をどれだけ読破しても実際に起業家になれるものでもないですし、むしろ畑違いの人の話が起業のネタにつながることもあります。何しろ、新しいことをするのが起業ですから、既存の本に答えを期待しても無駄です。

 私は最近になって料理とヨガをはじめました。

 料理教室に通い出してから気づいたのは、料理には考えることがたくさんあるという事実です。食材の調達から栄養バランス、カロリーや調理法など、思考の対象は多岐にわたります。いつの間にか、朝から晩まで料理のことばかり考える習慣が身につきました。

 しかも、普段の料理は1時間くらいの間に何品も作るので、マルチタスクが求められます。おかげで段取り力や時間管理力が相当鍛えられました。そのうち、料理をテーマにしたビジネス書を執筆できるかもしれません。

 ヨガも実際に取り組んでみたら、単なるストレッチを超えてインド哲学にもつながる精神性の高いものであると知りました。

 インド哲学を学んで事業にどう役立つのかわかりませんが、少なくとも人生観に影響を及ぼすはずです。

 仕事以外の勉強が仕事につながり、役に立たなそうな知識が役に立つということも往々にしてあります。

 だから、好きなことや面白いと思ったことを追究し、そこから「いかに仕事に役立たせるか」という発想に切り替えて学ぶほうが得策です。自分の好奇心にフタをしないこと。好きなことや面白いと思ったことをぜひ追究してください。