プールなどでふとした拍子に水を吸ってしまったとき、ツーンと耳が痛くなる。これは、多くの人が経験しているのではないだろうか。
これが強くくるとき、実は耳の中の中耳と内耳を囲む「錐体」という骨の中に出血が起こっている可能性がある。
鼻から耳につながる耳管から中耳に水が入り水の栓ができるのだが、水中で水を飲む嚥下運動が繰り返されることでこの水栓がピストン運動をし、中耳内の圧力を急激に上げ下げするのだ。
その結果、錐体内の毛細血管が破綻し、出血に至ったものが錐体内出血である。
この出血により、三半規管の機能が低下し、めまいやふらつきが起き、平衡感覚もわからなくなって溺れてしまう。
子どもがプールの事故で死ぬと、「プールの底がつるつる滑って起き上がれなかった」などの理由が挙げられるのを目にするが、説得力があるようには思われない。
健康な状態であれば、起き上がれなくても顔を上げればよいのである。水面に顔を出すことさえかなわないほど滑りやすいプールならば、むしろそれまで事故が起きなかったのが不思議なぐらいだ。
もちろん、お風呂やプールの水を飲んで死んでしまう場合は確かにあるので、全てが錐体内出血とは言えないし、これはそうそう起こるものでもない。
出血を起こしたとしても、急に水中でバシャバシャもがき出すので、早期に発見されれば助けられる。しかし、そういう可能性があることを知っているのは大切である。
特に風邪気味のときや、お酒を飲んで酩酊状態のとき、耳の疾患があるときは、錐体内出血が起きやすいので、気をつけた方がいいだろう。
食卓での窒息死
窒息にもいろいろなパターンがある。
首を絞められたときの窒息や、首つりの窒息など、おそろしい話が思い浮かぶかと思うが、日常生活の中でよく目にするのは、食べ物をのどに詰まらせて起こる窒息である。
なぜ、いつも食べている食品で、窒息が起こるのか。