のどの位置には、空気を肺に送る気管と、胃に食べ物を送る食道が前後に並び、前にある気管の入り口には喉頭蓋というフタのようなものがついている。

 呼吸したり話をしたりしているときには気管は開いているが、食べ物や水を口に入れて飲み込もうとすると、喉頭蓋によって気管が塞がれ、気管の後ろにある食道に食べ物が入るようになっているのである。

 そのため、水を飲んでも気管に入ってむせたりすることは通常ないのだが、飲み込むタイミングと喉頭蓋の閉じるタイミングがずれると、開いたままの気管に食べ物や水が入ってしまう。

 高齢では、飲み込む力が衰える上に反射運動も衰えるので、気管に食べ物や飲み物が流れ込み、誤嚥性肺炎などを起こしやすくなる。

 餅をのどに詰まらせて亡くなる事故は後を絶たない。餅のような粘度の高いものは、気管の入り口にひっかかりやすい。

 呼吸が苦しいので大きく息を吸おうとすると、よけいに餅が気管に入り込んでしまう。

 気管にものを飲み込んで窒息しかかったとき、確かに顔は赤くなるけれど、うっ血はそれほど強くは出ない。頸静脈が圧迫される絞殺の方が、はるかに強いうっ血が出る。

 絞殺は窒息というよりも、脳の酸欠が死因である。一緒くたに窒息だと思っている人は多いが、実は違うのである。

 とにかく餅をのどに詰まらせたときは、気道が完全に閉塞され、肺への酸素の供給がストップしてしまうので、多くの場合は数分から10分くらいのうちに死に至る。迅速な対応が求められるのだ。