それに、20代のうちは上司や先輩から何かと目配りされ、あれこれ指導を受ける機会も多いものです。

 そもそも、総合職系の正社員は、「わが社の基幹業務の担当者として一人前の戦力になりうる」というのが、最低限の採用基準ですから、多少早い遅いの差はあっても、ほとんどの人がそこまで昇格することは既定路線なのです。

 ハイパフォーマーについてはジョブ型のほうが早く昇格できそうですが、ミドルパフォーマーにとっては、ここまではジョブ型も能力主義も大差ありません。経験を通じて能力が上がり、能力に応じて仕事がアサインされるからです。違いが出てくるのは、ここからです。

30代半ばから40歳前後で
給与ピークを迎える

 能力主義であれば、企画業務の担当者になって、以降ずっと同じ仕事を担当していても累積貢献度が考慮されて、さらにもう1~2等級、管理職層手前か初級管理職層の等級まで昇格できるかもしれません。

 しかし、ジョブ型ではそうはいきません。ずっと同じ仕事を担当している限り、ずっと同じ等級です。

 企画業務の等級の上は、たいてい監督指導業務や高度専門業務と位置づけられています。職能資格制度であれば、「監督指導ができる能力がある」ということで昇格できますが、ジョブ型では、やればできるということではなく、基本的にその仕事を担当している必要があります。監督指導業務は組織長ポジションほど明確・厳密ではないにしても、ある程度ポジション数が限られます。

 ジョブ型では、企画業務の等級が昇格上限になるミドルパフォーマーも少なくありません。そうなると、30代半ばから40歳前後で給与ピークを迎えることになってしまいます。

 残された道は高度専門業務担当です。こちらはポジション数にはほとんど制約されません。むしろ、高度専門職の人数の多さは、その企業の人材の層の厚さと言い換えることができます。

 その意味では本人の専門能力次第ですが、単に同じ仕事を長く担当していても、専門能力が上がっていくわけではありません。「専業度」が高くなるだけです。

 むしろ、同じ仕事が長くなりすぎると、特定範囲のその仕事しかできなくなるという一面があります。

 専門能力を高めるカギは経験年数の長さではなく、成長につながる仕事の「場数」です。ここでは、昇格・降格運用、その判断の基礎材料になる人事評価の実態を、政府の「ジョブ型人事指針」の企業事例をもとに解説します。