企業にとってジョブ型の
メインターゲットは管理職層
2024年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」は、個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入を推進する旨を定めています。「ジョブ型人事指針」は、それを受けて、2024年8月に内閣官房・経済産業省・厚生労働省が公表したものです。
「ジョブ型人事指針」というタイトルではあるものの、内容としては、「日本企業の競争力維持のため、ジョブ型人事の導入を進める」が、「個々の企業の経営戦略や歴史など実態が千差万別であることに鑑み、自社のスタイルに合った導入方法を各社が検討できることが大切」ということで、全233頁のうち、3~233頁はジョブ型導入企業20社の事例を列挙しています。
充実した事例集ではありますが、正直なところ、これを見て一般のビジネスパーソンがジョブ型を理解したり、企業が自社に合いそうな仕組みを考えたりするのは厄介な作業かもしれません。
以降、「ジョブ型人事指針」から適宜、紹介・引用しながら、昇格・降格と人事評価を解説します。
企業にとって、ジョブ型のメインターゲットは管理職層です。大目的の1つは、職務給によって職責と処遇を整合させること、そして、より本質的には、管理職ポジションの適所適材を推進することです。ジョブ型導入企業では、管理職登用やポストオフの方法に変化が見られます。それらはダイレクトに昇格・降格に繋がります。
管理職試験の廃止に伴い
若手管理職登用が進む
企業事例を見てみましょう。まずは、若手の管理職登用状況です。
・以前は「累計昇格ポイント」の蓄積により昇格が決定されるため、年功的な登用がなされていたが、ジョブ型人事の導入によりこれを廃止した【資生堂】
これら2社の例では、等級ポイント・累計昇格ポイント、管理職試験という部分に注目です。
等級ポイントや累計昇格ポイントは、毎年、等級と人事評価成績に応じたポイントが付与されて、資格昇格や役職登用には、一定以上の合計ポイントが必要になるというものです。空きポジションの職務要件を満たしていても、ポイントが貯まるまでは登用できず、年功的性格を持っています。
管理職試験にも受験資格に年功的要素が含まれている場合が多いこと、そして、人事部によって中央統制されている点が特徴です。