試験の廃止は、年功的要素の排除とともに、各部門のニーズに応じた登用が可能になることを意味します。リコーも管理職登用試験を廃止しています。
それらの取り組みによって、各社の若手管理職登用が進んでいます。
・人事制度の改定により、管理職に占める30代の割合が3%から6%以上へと倍増するなど、若手抜擢の効果は出てきている【テルモ】
・ジョブ型人事導入後の約2年間で、従前ではあまり見受けられなかった、30代で課長に昇進する社員も増加している【ENEOS】
・30歳前後で管理職に昇格するケースも出てきており、社内では「本当に会社が変わるのだ」という受け止めも広がっている【オリンパス】
・新人事制度の導入以降、2021年4月から2024年4月にかけて、40歳未満の管理職数は2.6倍に増加した【KDDI】
・非管理職の社員がマネージャーに抜擢され、一気に等級が4つ上がったケースもある【ライオン】
年齢に関わらず
適所適材の管理職登用
このように、ジョブ型によって若手登用の機会が広がっています。これまでは、特別な抜擢とみなされていたものが、今後は通常ルール内の登用として行われるようになるわけです。
ジョブ型の適所適材の考え方は、若手登用だけでなく、役職定年にも影響を与えています。役職定年制度は、年齢だけを基準にポストオフを行う、いわば“逆年功”のルールで、これも適所適材の考え方とは相容れません。

藤井 薫 著
リコー、東洋合成工業など、ジョブ型導入を契機に役職定年を廃止した企業や、パナソニック コネクト、レゾナック・ホールディングス、ライオンなど、そもそも役職定年制度を設けていない企業も目立ちます。メンバーシップ型とジョブ型の「一国二制度」をとる三菱UFJ信託銀行は、ジョブ型の対象者には役職定年が適用されません。
また、オリンパスは、役職定年を廃止しただけでなく、「定年後再雇用者は、従前は課長級以上のポジションには就任できなかった。これを改め、適任者であれば役職に登用し、それに応じた処遇ができる仕組みとした」と、一歩踏み込んだ対応です。
ライオンでは、制度改定後は育休や産休等を理由に一時的に職場を離れた社員が管理職に任用されるケースも出てきているとのことです。
ジョブ型導入企業は、若手登用や役職定年廃止など、年齢に関わらずに適所適材の管理職登用を進めています。