ただし、資産課税強化を実行しようとすると、資産の流動性が十分でないという問題が生じる。この問題は、とくに不動産について顕著だ。多額の不動産を所有していても、居住用資産である場合には現金の収入をもたらさないからだ。高齢者家計の多くは現金の収入を持たないので、負担を求められても払えない場合が多い。

 これに対処するには、つぎの2つの方法があり得る。

 第1は、相続税において調整することである。

 すなわち、現金収入が不十分で保険料や自己負担を支払えない場合には、それに相当する額を、介護保険からの貸し付けとするのである。そして、不動産の相続時において、貸し付けの元利合計額に相当する額を相続税に上乗せして徴収する。

 こうすれば、多額の不動産を保有する家計は、そうでない家計に比べてより多くの自己負担を負うことが可能になる。

 この方式を取る場合には、介護保険制度と相続税制度との連携が必要になる。もともと税と社会保障制度は密接な関連があるので、両者の一体的な運営が必要になるのは、当然のことだ。

 しかし、現実の世界では、税を所轄する官庁と社会保障を所轄する官庁は別であるため、このような連携作業がなかなか行いにくい。したがって、この方式は本来は望ましいものなのだが、現実に実行するのは難しいことは認めざるをえない。少なくとも、現在の制度のままで円滑に実行できるようなものではない。

リバースモーゲッジなどは
ストックをフローに転換する

 第2の方法は、リバースモーゲッジを活用することだ(注1)。

「リバースモーゲッジ」とは、保有する不動産を担保にして、一定額を金融機関から借り入れる仕組みだ。なお、契約期間中は、担保になっている自宅に住み続けることができる。

 通常の住宅ローンでは、最初に借り入れ、その後元本を徐々に返済していく。したがって、時間の経過と共に借入残高が減少していく。それに対して、リバースモーゲッジの仕組みでは、時間の経過と共に借入金残高が徐々に増えていくことになる。