ルスカは不器用だったんだよな。柔道のオリンピック金メダリストだからもちろん柔道は強いし力も強い。走るのも速ければサッカーや水泳なんかやらせてもうまかったんだけど、プロレスだけが下手だったんだよ。
ルスカのパンチなんて、お客さんから見ると「あんなパンチ、効かないだろ」と思うような不恰好なパンチなんだけど、やられたほうはメチャクチャ痛いんだ。そりゃみんなも嫌がるわな(笑)。
かと思えば、変に力をセーブしているところもあった。俺はルスカに言ったことがあるんだよ。「お前、柔道金メダリストじゃねえか。プロレスの試合でも柔道の技でポンポン投げろよ。きれいに投げられるんだから」ってね。
そしたらルスカが、「いや、投げると他のヤツらが文句を言うんだよ。それに相手を壊してしまうかもしれない」って言うから、「そりゃプロなんだから壊されるのを覚悟でやらないとギャラはもらえないだろ。俺には遠慮なくやってきてくれ」と言ったんだ。
そしたらアイツは俺のことを信頼してくれたんじゃないかな。のちにヨーロッパに行った時、ルスカがものすごく面倒を見てくれたからね。
「プロレスは闘いである」
猪木さんとの思い出
それからずいぶんあとになって、猪木さんの引退カウントダウンの時、またルスカが猪木さんとやったんだよな(1994年9月23日、横浜アリーナ)。その時、ルスカの控室に行ったら、「オー、フジワラ!」って喜んでくれてね。自分のブロマイドとかを鞄から出してきて、プレゼントしてくれたんだ。
プロレスラーとか格闘家っていうのは不思議なもんでね、思いっ切り闘ったヤツとは友情が芽生えることがあるんだよ。猪木さんとアリだって最後は友情で結ばれていただろう。
お互い、ひょっとしたら殺されるかもしれないと思うような試合を闘いながらも友情が生まれるんだ。一般の人には理解できないかもしれないけどな。ルスカも亡くなってしまったけど、俺は今でも友達だと思っているよ。