ブームが過熱する中、起業家たちの間には「FOMO」(Fear of Missing Out、取り残される恐怖)が蔓延しているという指摘も出ている。朱氏の発言と同時期に明らかになったのは、実は朱氏らのように早くからロボット・エンボディドAIに投資してきた投資家やベンチャーキャピタルの間では、すでに昨年末から2025年のロボット業界へのエンジェル投資は徐々に収束に向かうだろうという見方が広がっていたという事実だった。

 それが突如、現在のような過熱状態に転じた。その熱狂ぶりはかつてのスマートカー投資ブームを凌ぐとさえ言われている。

 朱氏は2024年に同社が調査した23のエンボディドAIプロジェクトのうち、その技術が将来量産にこぎつけてコスト削減あるいは収益増大につながると実証できたのはわずか14%に過ぎなかったと指摘。一方、同社が2018年から22年の間に10倍のリターンを得たハードウェアプロジェクトでは、この比率は32%だったと述べている。

 こうした朱氏の「そろばん勘定」に対し、人型ロボット産業に期待を寄せる人々からは「AIロボットのようなハードとソフトを融合した産業は、(朱氏の言うような)従来型の事業投資とは異なる投資回収の視点が必要だ」という反論も出ている。

「人型ロボット産業には必ず大成功企業が誕生する」と確信するブーム推進派と、冷静に外部から観察する懐疑派、どちらが最終的に「正しかった」と言えるようになるのだろうか。

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