大工仕事をする産業用ロボットがヒト型であるもっともな理由とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

現在、人手不足の解消や作業の効率化のためにロボットを導入している分野は多い。産業ロボットの多くは効率化を目的としているため、現場作業に特化した車輪や専用のアームが付いているなど、ヒトとは似ても似つかない形をしている。そんな中、産業技術総合研究所では産業用でもあえてヒト型のロボットを開発しているという。そのこだわりを聞いた。※本稿は、ブルーバックス探検隊、産業技術総合研究所『あっぱれ!日本の新発明 世界を変えるイノベーション』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

国内外から注目を集めた
大工仕事をするヒューマノイド

「ヒト型ロボットが大工仕事をしている!」。

 YouTubeに公開されたある動画が、国内外の注目を集めていた。人間の形をしたヒューマノイドが、作業台の上に平積みされた石膏ボードから1枚をつかみとり、壁まで運んで立てかけ、片手でそれを押さえながら、もう片方の手で箱からピックアップした電動ドライバーを使って、壁にビス留めしているのだ。

図2-1 YouTubeにアップされたデモ動画同書より転載 拡大画像表示

 動画は産業技術総合研究所が2018年9月27日に公開したもので、4カ月後の2019年1月29日には、再生回数はなんと105万回を超えたという。噂を聞いて、さっそく動画に見入る探検隊員(編集部注/本稿の取材や執筆をしている「ブルーバックス探検隊」のメンバー)たち。

「たしかにすごい!ロボットが人間みたいに働いている。アシモフ(注)がSF小説に書いたような未来世界が本当に到来するのだろうか!?」

(注)アイザック・アシモフ 米国のSF作家・生化学者。ロシア生まれ。ロボットをテーマにした作品『わたしはロボット』を著し、「ロボット工学三原則」を提唱するなど、人間とロボットの関係を深く考察した。

 けれども、興奮する隊員たちの心に、どこかひっかかるところもあった。

 胸にディスプレイをつけた「Pepper」(いわゆる「ペッパーくん」)をはじめ、ヒト型ロボットすなわちヒューマノイドを、近年はちらほら見かけるようになった。それらは「コミュニケーション」を主目的につくられたものがほとんどで、ヒト型をしているのは人間とコミュニケーションするためといっていいだろう。

 一方で、産業用ロボットはそれらとはまったく違う方向で進化している。建設業界でも、災害の復興という需要も増えて作業現場での労働力がこれまで以上に求められているが、少子高齢化で人手不足が深刻化していることから、ロボット技術への期待が高まっている。大手ゼネコン各社ではすでに、現場への試験的な導入も始まっている。