日本の石油はどこから? 中東以外の「超意外な国」とは?
「経済とは、土地と資源の奪い合いである」
ロシアによるウクライナ侵攻、台湾有事、そしてトランプ大統領再選。激動する世界情勢を生き抜くヒントは「地理」にあります。地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
本連載は、「地理」というレンズを通して、世界の「今」と「未来」を解説するものです。経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの地理講師の宮路秀作氏。「東大地理」「共通テスト地理探究」など、代ゼミで開講されるすべての地理講座を担当する「代ゼミの地理の顔」。近刊『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』の著者でもある。

日本のエネルギー問題を考える
「いかに軍備を整えようとも、食料とエネルギーが途絶えれば国家は一瞬で瓦解する」
国家にとっての安全保障を考えるうえで、最も重要なのは食料とエネルギーではないでしょうか。日本はこれらの多くを輸入に依存しています。輸入先との関係性だけでなく、世界情勢の変化を受け、資源の輸送ルートの安全確保が日本経済にとって重要な課題となっています。その日本が、各種資源をどこから輸入しているのかご存じでしょうか?
原油:中東に依存しつつ、近年はアメリカからも
日本は、エネルギー資源において自給率が非常に低く、原油の自給率は0.3%にすぎません。日本の主な原油輸入先は、ペルシア湾岸諸国を中心に、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、アメリカ合衆国、エクアドル、オマーン、オーストラリア、ベトナム、インドネシアなどから輸入しています。日本はОPEC(石油輸出国機構)依存度が89.1%(2023年)と、非常に高い国ですので、特に日本と西アジアを結ぶシーレーンの安全確保は絶対です。
ちなみに、太平洋戦争直前の1935年時の最大輸入先はアメリカ合衆国でした。総輸入量420万4000klのうち、274万9000kl、実に65.4%を占めていました。
アメリカ合衆国が日本に対して、原油の輸出をストップしたことは、日本が戦争へと突入する要因の1つとなりました。近年、そのアメリカ合衆国からの輸入が増加しています。2010年代の「シェール革命」を背景に、アメリカ合衆国では原油と天然ガスの産出量が急増。これによって生まれた輸出余力を背景に、日本はアメリカ合衆国からの原油の輸入量を増やしています。日本はロシアからの原油輸入も増加させていましたが、ウクライナ侵略による、その後の日露関係についてはみなさんもご存じのことと思います。
エクアドルからの輸入が増えている!
また近年では、エクアドルからの輸入が急増しています。ちょうど、イランに対するアメリカ合衆国の制裁再強化によって、対イラン原油輸入量が減少し始めたのとほぼ同時期のことですので、中東依存を少しでも緩和する狙いがあったと考えられます。
(本原稿は『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』を一部抜粋・編集したものです)