「いつも浅い話ばかりで、深い会話ができない」「踏み込んだ質問は避けて、当たり障りのない話ばかりしてしまう」上司や部下・同僚、取引先・お客さん、家族・友人との人間関係がうまくいかず「このままでいいのか」と自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
世界16カ国で続々刊行され、累計26万部を超えるベストセラーとなった『QUEST「質問」の哲学――「究極の知性」と「勇敢な思考」をもたらす』から「人生が変わるコミュニケーションの技術と考え方」を本記事で紹介します。

「なぜ」と「どのように」を使い分ける
私たちは、「なぜ」の質問をすることにかなり消極的だ。
主な理由は恐怖だ。相手の考えに異議を唱えているのではないか、議論を挑んでいるのではないかと思われるのをおそれているのだ。
だが「なぜ」と質問しなければ、新たな視点が得られないこともある。
良い会話をしていて、相手とのあいだに信頼関係があると感じられる場合、「なぜ」の質問が頭に浮かんだら、躊躇せずに尋ねてみよう。
とはいえ、相手が反射的に防御的になることを考慮して、「なぜ」を尋ねるときは次のように言い換えることも検討しよう。
「なぜまだ肉食を続けているのですか?」
→「肉食を続ける理由は何ですか?」
「なぜ投票を義務化すべきだと思うのですか?」
→「あなたが投票を義務化すべきだと思う理由は何ですか?」
「なぜそう思うのですか?」
→「あなたがそう思った理由は何ですか?」
「なぜ」を尋ねるときには、この質問が、複数の原因や理由があるときにそれを一つに絞るような尋ね方になりかねないことにも注意すべきだ。
現実は複雑であり、物事の背後にはさまざまな原因や理由があるものだ。
しかし「なぜ」と尋ねると、単純な答えを招くことになってしまう。
例えば、「第二次世界大戦はなぜ起こったのか?」と尋ねられると、一つの理由を探したくなるが、それは現実には至難の業だ。
唯一の原因を探りたい場合は、右記の例のように、具体的に「……の理由は何ですか?」と尋ねてもいい。
しかし、もっと複雑な回答を引き出したいのなら、質問を「どのように(how)」から始めると良いだろう。
「なぜ肉食をやめることにしたのですか?(Why did you decide to stop eating meat?)」という尋ね方をすると、一つの理由が返ってきやすくなる。
しかし、その理由は複数の要因が組み合わさったものかもしれない。
その場合は、「どのようにして肉食をやめることになったのですか?(How did you arrive at the decision to stop eating meat?)」のほうが良い質問だと言えるだろう。
(本記事は『QUEST「質問」の哲学――「究極の知性」と「勇敢な思考」をもたらす』の一部を抜粋・編集したものです)