心理学者モフィットは、1000人の子どもを生まれたときから32年間にわたって追跡調査を行った結果、子ども時代の自己コントロール力が将来の健康や富や犯罪を予測することを確認している。

 具体的には、我慢する力、衝動をコントロールする力、必要に応じて感情表現を抑制する力など、自己コントロール力が高いほど、大人になってから健康度が高く、収入が高く、犯罪を犯すことが少ないことがわかったのである。

 自己コントロール力は、勉強だけでなく、趣味や習い事、人間関係など、生活のあらゆる側面において大きな影響力をもつ。

 たとえば、自分の言い分が通らないとすぐに怒りを爆発させるのでは、人間関係がなかなかうまくいかないだろう。思い通りの成果が出ないとすぐやる気をなくすようでは、勉強も部活や習い事もなかなかできるようにならないだろう。嫌なことがあるとすぐに落ち込み、何も手につかなくなるようでは、この先勉強でも仕事でも人間関係でも行き詰まることが多いはずだ。

 このように重要な意味をもつ自己コントロール力に関しても、興味深いデータがある。

 国立青少年教育振興機構が2017年に実施した「高校生の心と体の健康に関する調査」には、「私は怒った時や興奮している時でも自分をコントロールできるほうだ」という項目がある。この項目を肯定する高校生の比率は、アメリカでは81.6%、日本では63.6%となっている。

 つまり、腹が立ったり興奮したりしても自分をちゃんとコントロールできると答える者の比率は、アメリカの高校生の方がはるかに高い。

 でも、これはどうも怪しい。映画やドラマをみても、アメリカ人はすぐに興奮し、感情的になり、モノを叩いたり、怒鳴ったり、人につかみかかったりする。

 攻撃性に関するとてもおもしろい調査データがある。心理学者ヒュースマンたちは、平均年齢8歳だった子どもたちが20~25歳になる15年後に追跡調査した結果、8歳の頃に暴力的なテレビ番組を常習的に視ていた者は、男女とも大人になったときの攻撃性が高いことを確認した。

 たとえば、8歳の時点で暴力的番組の視聴時間が上位4分の1に入っていた男性では、犯罪を犯した者の比率は11%(残りの4分の3の男性では3%)、過去1年間に配偶者を押したり掴んだり突き飛ばしたりした者の比率は42%(同22%)、過去1年間に腹を立ててだれかを突き飛ばした者の比率は69%(同50%)と、攻撃行動を取る人物の比率の高さがとくに目立っていた。

 女性でも、8歳時に暴力番組の視聴時間が上位4分の1に入る者では、過去1年間に配偶者に物を投げた者の比率は39%(残りの4分の3の女性では17%)、過去1年間に腹を立ててだれか大人を殴ったり首を絞めたりした者の比率は17%(同4%)となっており、男性同様に攻撃行動を取る人物の比率の高さがとくに目立っていた。