人間は「冬眠」できるのか?2カ月も飲まず食わずで生存した衝撃ケース写真はイメージです Photo:PIXTA

クマやリスといった哺乳類が冬眠できるのならば、ヒトも冬眠できるのではないか?そんな問いをもとに重ねられた研究結果によって、「人間の冬眠」の可能性が高まりつつある。ヒトが冬眠することで、実は救急医療や宇宙開発に飛躍的な進歩をもたらすのだという。※本稿は、櫻井武『睡眠と覚醒をあやつる脳のメカニズム~快眠のためのヒント20~』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

人間も冬眠する能力を
もっている可能性が高い

 冬眠は特殊な動物だけもっている際立った習性のようなイメージがあるかもしれない。しかし、決してそんなことはない。リスやクマなどが特別に獲得した能力とは考えにくい。

 なぜならば冬眠する哺乳類は多くの種にわたるからだ。また、類縁の種にかたまっているわけでもない。げっ歯類で考えても、リスやヤマネ、ハリネズミは冬眠するし、ハムスターの仲間にも冬眠するものがいる。しかし、マウスやラットは冬眠しない。シリアンハムスターは冬眠するけれど、ジャンガリアンハムスターは冬眠しない。

 冬眠するのは、特定の種や目にだけ存在するわけではない。リスはげっ歯目だが、クマは食肉目、コウモリはコウモリ目。ヒトに近い霊長目の中にも冬眠する種はいて、多くのサルは冬眠しないが、マダガスカル島にいるフトオコビトキツネザルは乾季になると冬眠(休眠)をする。

 生物の分類は「種」「属」「科」「目」と詳細になっていくが、どの目でも冬眠するものもしないものもいる。つまり、「冬眠」は哺乳類の共通祖先がすでにもっていた形質ということが強く示唆されるのだ。