「靴下を履いて寝る人が知らない事実」専門医が教える、面白い睡眠の話写真はイメージです Photo:PIXTA

日常的にストレスを抱え、不眠に悩む人が多い現代ニッポン。睡眠の質を下げる要因は、我々の生活のあらゆるところに隠されている。「寝る前のスマホ」「寝る前の歯磨き」「靴下をはいたまま寝る」……ついついやりがちなこれらの行動は、すべて睡眠の質に悪影響を与えるのだという。睡眠専門医である著者が快眠のコツを解説する。本稿は、白濱龍太郎『「寝つきが悪い」「すぐに目が覚めてしまう」人のお助けBOOK』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。

眠っている間に回復力を高める
アミノ酸やビタミン

 睡眠中の体を修復し再生する材料として欠かせないのがタンパク質。これを構成するアミノ酸の中でも、睡眠の質を高めるために不可欠なのが以下の3つです。

 1つめは、トリプトファン。セロトニンやメラトニンの原料となる必須アミノ酸ですが、人の体内ではつくられないので食事からとる必要があります。これを多く含む食材は、鶏むね肉、牛肉、牛乳、チーズ、卵、バナナ、大豆製品、ナッツなどです。

 2つめは、GABA(ギャバ)。心身をリラックスさせ、不眠を改善する効果があります。発芽玄米、雑穀類、トマト、ブロッコリースプラウト、カカオなどの食材に多く含まれています。

 3つめは、グリシン。体の深部体温を下げる働きがあり、眠るためのスイッチをオンにしてくれます。エビ、カニ、イカなどに多く含まれています。

 また、睡眠と密接な関係にある免疫力を上げるための栄養素として重要なのが、ビタミンD。鮭、サバ、マグロなどの魚類やきくらげなどのきのこ類にも含まれています。さらに、睡眠のリズムを整える栄養素として、ビタミンB12があります。カキ、シジミ、アサリ、焼きのり、レバーなどに多く含まれています。

 こうしたアミノ酸やビタミン以外にも、睡眠をサポートしてくれるサプリメントの活用も手です。体が熱くなって眠れない人には、グリシン配合のサプリもよいでしょう。血管拡張作用があり、深部体温を下げてくれます。

 睡眠をサポートするものとして、睡眠薬という選択肢もあります。最近は薬の改良が進んで副作用が軽く依存性の少ないものも増えてきたので、医師や薬剤師に相談してみてください。

主な睡眠薬同書より転載 拡大画像表示

スマホが招く
「マインドワンダリング状態」とは

 最近、睡眠に課題を抱えた人たちの中に、「マインドワンダリング状態」に陥っている人が増えているようです。

 マインドワンダリングとは、「心がさまよっている」ことをいいます。例えば、すぐにやらないといけない仕事を抱えているのに、翌週のアポイントのことを考えたり、家事をしているときに前日にあった嫌なことをふと思い出したり……。目の前にある物事から心が離れて、まったく別のことを考えてしまっている状態です。

 疲れを感じているとき、人間の脳が現在のことを考えているのは約50%程度で、残りは過去と未来のことを考えてしまっているといわれています。この状態が長く続くとネガティブな気分をもたらす原因になることが最近の調査でわかってきました。