睡眠薬の長期服用で「認知症」リスクも…医学博士が「使用は慎重に」と警告するワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

不眠症に苦しむ人が頼る「睡眠薬」。服用することで、「眠れた」という満足感を得られる一方、長期常用してしまうことで別の恐ろしい病のリスクを高める可能性があるのだという。睡眠薬とどのように付き合うのが正解なのだろうか。※本稿は、櫻井武『睡眠と覚醒をあやつる脳のメカニズム~快眠のためのヒント20~』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

日中に活動ができていれば
不眠症とはいえない

 睡眠に不満をもつ人はわりと気軽に「不眠症」と自己診断する傾向がある。

 しかし、不眠症には本来、明確な診断基準が設けられている。たとえば「ICSD-3(睡眠障害国際分類基準)」やアメリカ精神医学会が発行している「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版(DSM-5)」などが診断基準となる。「眠れない」という主観だけでは不眠症とはならない。

 その診断基準で重要なポイントの1つが持続性だ。入眠障害や中途覚醒などの不眠症状が週3日以上、3カ月以上持続する場合、不眠症が疑われる。そして同時に、「日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」ということも重要な要件となっている。

 昼間に覚醒障害がある、起きてられない状態があるかどうかがいちばんの問題だ。つまり、眠れていない(ように感じているけれど)、普通に起きて、日中に活動ができていれば不眠症とはいえない。当然、治療の必要はないし、睡眠薬を使う必要もない。

 もっといえば、不眠症であっても必ずしも睡眠薬が必要なわけではない。