忙しい毎日を送っている人はつい睡眠時間を削ってしまいがちだが、その代償は大きい。毎日7時間の睡眠をとる人に比べて、睡眠時間が6時間以下の人の場合は認知症リスクが一気に跳ね上がることがわかっている。しかし、どうしても睡眠時間が十分に取れない時は、どう対策したらいいのだろうか。脳の専門家が最適な睡眠時間について解説する。本稿は、川島隆太『脳を鍛える!人生は65歳からが面白い』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
脳にとって最適なのは
1日7時間睡眠
「睡眠」も脳の若さに大きく影響する要素です。睡眠と脳機能についても見ていきましょう。
「年をとったら寝つきが悪くなった」「寝ていたくても朝早く目覚めてしまう」「一度眠っても夜中に目覚めて目が冴えてしまう」。そんなふうに、加齢とともに睡眠に悩む人が増えるようです。私も、若いころからいわゆる朝型人間ではあったものの、最近はより早朝から覚醒するようになり、日の出を見るのは当たり前になりました。
睡眠不足が脳の働きを悪くすることは、皆さんも経験としてご存じではないでしょうか。頭に膜がかかったかのように思考がぼんやりしてしまう。明瞭に言葉が出てこなくて、なんとなくだるい。1回の寝不足でもその日の生活に支障が出るのですから、寝不足が常態化すれば脳のダメージも甚大です。
実際に科学的に、慢性的な睡眠不足になると脳が萎縮する、認知機能を著しく損なうなどの恐れがあることがわかっています。
そうならないためにも、睡眠の「質」と「時間(量)」を上手にコントロールしていく必要があります。では一体、1日に何時間くらい眠ればいいのでしょうか。
もしかすると、たくさん寝れば寝るほど身体にも脳にもいいと思っている方もいるかもしれません。ですが、中国の研究で、「睡眠不足だけでなく、過剰な睡眠も脳にはよくない」ということがわかっています。
この研究で38歳から73歳の男女を対象に調査したところ、睡眠不足と過剰睡眠の両方が認知能力を低下させることが判明しました。1日7時間睡眠が最適であり、過不足があると処理速度、視覚的注意、記憶といった認知能力が低下し、精神状態にも悪影響が出たのです。
休日に「寝だめ」を
してはいけない理由
ただ、睡眠時間を7時間ぴったりにするのは、難しいかもしれませんね。現実的なところで折り合いをつけるとすれば、6~8時間の睡眠時間であればいいのではないでしょうか。
眠りが足りているかは「休みの日にも普段と同じ時間に起きられるか」がひとつの目安になります。休みの日に寝だめをしたくなる、身体が辛くて起きられないという状態は普段の睡眠時間が足りていません。毎日の就寝時間を見直すなど、睡眠時間を増やす工夫が必要です。