AIのレベルがもっと進化すれば
専門家の予測はどう変わるか

 しかし、AIを日常的に使う人が増えている中で、どの専門家が役に立ち、信頼に足るかの判断を聞く人は増えるだろう。役に立たない人の話を聞くのは時間の無駄以上の損害がある。その際に、AIは多くの人が言う意見からもっともらしく答えているだけだ。

 AIのレベルは今後もっと進化していくだろう。専門家の予測は後に検証データを読み込んでその正確性を判断するようになることは想像に難くない。現状は意見の総和でしかないのだから、今後の方が専門家には厳しい目を向けられるだろう。

 私はこうしたAIの進化は歓迎している。検証は口で言うほど簡単にはできないもので人間がやるにはかなり手間になる。それをAIが代行してくれればバイアスの無い結果を得やすいし、たとえ私が間違えた予測をしたとしても学習することでより精度を上げて、再評価されることもあるかもしれない。

 その意味で、主張を変えない意固地な専門家も多い。まったく根拠のないフィクションを直感的に理解しやすいストーリーで展開すると、もっともらしく聞こえるものだ。また、声が大きいだけの自分のつたない経験しか語らない人もいる。これまでもディベートの様な番組でご一緒した人には、自分の主張だけで他人の意見を聞かない学習効果がゼロの人も多かった。

 私はメディアから出演依頼を受ける立場だが、メディアも同様の評価を受けるだろうと想定している。番組の企画力や誰を呼ぶかのキャスティング能力や専門家の意見を引き出すMCの能力は優劣があるものの、それは現段階では評価されてはいない。

 不動産大暴落論者が重宝されるのもメディアの都合と言える。テレビのようなマスメディアの視聴率、雑誌の部数や、YouTubeのようなオンラインメディアの再生数は、内容や信ぴょう性は二の次にするだけの力があった。

 しかし、それも早々にメディアとしての評価が下ることになるかもしれない。タイトルだけは注目度が高いが、お役立ち度は低いなどと評価される時代はそう遠くないかもしれない。メディアはどういった優先順位で番組制作するのか、が問われている。

 日本のメディアでは両論併記が多く用いられる。両論併記とは、異なる2つの意見(例えば、賛否)を両方載せる手法だ。このいかにもどっちつかずな、どちらが正しいか分かりませんという低レベルな展開は意思決定に結びつかないという意味で、情報として役に立っていない。本来なら、どういう場合にはどっちがいい位の峻別は欲しいものだ。

 不動産の業界において、コンサルティングでお金がもらえる人は私以外あまり見たことがない。それだけマーケットは小さく、お金を払う習慣がそもそも不動産業界にはなく、予算を取っていない会社も多い。また、お金を払ってもらうだけの実力を持つ人もいない。不動産は相続財産の半分近くを占める大きな個人資産でもあるので、少なくとも人の役に立っているかどうかの判断はできるようになってもらいたいものである。

(スタイルアクト代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)