「これぞ中園ミホ脚本の妙味…!」のぶの“しゃんしゃん東京にいね”が刺さる理由【あんぱん第33回レビュー】

空き地シーンの会話に感じる
今日の脚本の妙味

 そして、空き地にのぶがやって来た。嵩は銀座のショーウィンドーで見かけた真っ赤なハンドバッグをプレゼント。

「たまるか。こんな美しいもの」とのぶは感嘆するも、いまのご時世にこんなぜいたくなものをもらうわけにはいかないと受け取らない。

「戦地の兵隊さんのことを考えてみいや」というのぶに嵩は、戦争はいつか終わる。その日が来たら、バッグを持って銀座を歩いてほしいと未来に想いを馳せるのだ。

 でものぶは、ぜいたくするなら献金すべきと反論する。

 ここで、嵩の「いごっそう」っぷりが発揮される。

「美しいものを美しいと思ってもいけないなんてそんなのおかしいよ」

 そんなことを教えるような先生はやだと断固否定。

 昔ののぶはもっと正直で面白い子だったと言う嵩。のぶは、嵩も「変わった」「もうあの頃みたいにはなれん。わかったやろう」と落胆し、「しゃんしゃん東京にいね」と突き放す。

 自分たちは幼い頃と変わってしまったと自覚しつつ、「しゃんしゃん東京にいね」(さっさと東京に帰れ)は幼い頃、嵩にうっかり言ってしまった言葉である。変わったようでのぶは変わっていないのだ。ここが今日の脚本の妙味である。

 まっすぐ過ぎて、思い込みが激しく、正直すぎて思ったことをすぐ口にしてしまうのぶ。

 突っ返されたバッグの箱を抱えて立ち尽くす嵩。

 戦争をどう考えるか。主人公と相手役を異なる価値観を持ったものとして対立させることはわかりやすいけれど、ちょっと酷でもある。

 ふたりの仲は修復するだろうか。このまま戦争に突入し嵩も出征してしまうなんていうしんどい展開にならないことを祈りたい。

 「これぞ中園ミホ脚本の妙味…!」のぶの“しゃんしゃん東京にいね”が刺さる理由【あんぱん第33回レビュー】