これらは一見当たり前のように見えますが、経営の現場では、意外と意思決定のための情報収集プロセスが軽視されています。正直なところ、私もかつては次のように考えていました。
「多く情報を集めても、意思決定の早さが阻害されるだけ」
「複数のプランを並行して考えても、それほど意思決定の精度は上がらない」
「分かっていないので、外部のアドバイザーは不要」
「対立意見をいちいち戦わせることで意思決定がよくなるとも思えない」
「意思決定は早いほどよいからすぐ決めるべき」
「すべて自分が決めるべき」
「必要な情報はすべてそろえておかないと失敗する」
「意思決定の失敗はありえない」
「少ない情報で素早く」
意思決定することは可能か?
時間的な制約があることは確かですが、意思決定を重ねていくといつしか生存者バイアスからか過去の成功体験から、自分はそれほど情報を集めたり事前プロセスに負荷や時間をかけずともよい意思決定ができる、ととらえて、プロセスについて軽視しがちにもなります。
改めて多くの情報活用や代替案の検討、対立意見の取り込みなどを意識していく必要があることが分かります。
アドバイザーの活用については、誰かに意思決定をゆだねたり、依存したりするわけではなく、あくまでアドバイザーとして、情報の読み解き方や整理、第三者としての客観性もしくは専門性を活用することに意味があります。ある情報に対して、専門家の目を通して理解を深めていく、といった手法も有効でしょう。
情報は多ければ多いほど、意思決定の精度は高まります。少ない情報での意思決定は大きなリスクであり、できる限りの情報収集はとても重要です。
ただ実際には、情報を集めるには非常にコストがかかります。「情報をたくさん集めても、整理が大変だし、あまり意味がない」という意見もあるでしょう。もちろん、やみくもに集めても意味はありません。石橋をたたくように情報だけ貯めて検討を重ね、無意味に時間が流れたり、意思決定だけ先送りされたりするようなケースは避けてください。
重要なのは、「設計→検証→振り返り→調査」の検証サイクルを適切に回していくことです。とくに不十分な情報で意思決定することはありますし、それを過剰に恐れるのもよくないことです。