こんな風に、書籍やウェブ記事、あるいはポッドキャストをきっかけに、分断の様子に気付くことができる。本記事で書いたことも、その一助になれば幸いである。

「きれいな言葉」が
顧客を遠ざける日

 もし分断に気付いたら、その「解像度」を上げていくことも必要である。これが「深める」ことだ。特にビジネスを行う人の場合、「深める」作業は自社コンテンツのターゲットを定め、彼らを満足させたり、彼らに刺さる自社のストーリーを構築していったりする際には欠かせない作業となるだろう。

 例えば、そこでは「誰と誰」の分断が起こっているのか、それはいつから起こっているのか、その分断は社会にマイナスの影響をもたらすのか、むしろ分断されたままの方がいいのか……などなど、深める視点はたくさんある。

 特に、「ニセコ化」といっても、その空間の賑わいを創出するようなプラスの側面もあれば、ジェントリフィケーション(編集部注/都市において、地域が再開発や文化的活動などによって活性化した結果、地価が高騰すること)に通じるようなマイナスの側面を持っている場合もある。単に「分断されているから良くない」と断じるのみで、それがどのような影響を与えているのかを捉えない限り、「ニセコ化」時代を乗り越えることはできないだろう。

 また、企業やメディア、あるいは地方自治体の広報については、近年流行している、「SDGs」や「ESG」、「ウェル・ビーイング」、そして「多様性」「包括性」といった、「みんなのため」的なキレイな言葉に惑わされすぎないことも非常に重要である。

 こうした言葉の美しさとそれゆえの茫漠さに隠れて、自社コンテンツ、あるいは地域のコンテンツの魅力を「誰に届けるべきなのか」がわからなくなってしまうことがあるからだ。

 もちろん、こうした言葉を軸にブランディングを固めていくこともできる。例えば、スターバックスがこうした言葉を軸にある種の「顧客の選択」を行っているように、これらの言葉についてもその効用を吟味した上で活かせるならば意欲的に使っていくべきだ。