「キャッシュレスオンリーの店」が無意識に拡散している「静かな排除」と「社会の分断」写真はイメージです Photo:PIXTA

キャッシュレス決済が広がり、「キャッシュレスオンリー」の店が急増している。しかし、こうしたツールを使いこなせる人とそうではない人には「静かな排除」と「分断」が生まれ、街の多様性は失われつつあるのではないか。日本の各地で「ニセコ化」が広がる中、ビジネスをする事業者が意識すべき3つのこととは。※本稿は、谷頭和希『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

『ニセコ化するニッポン』は
SNS時代の都市論である

 都市社会学者のマニュエル・カステルは「空間の変化は社会構造における変化の明細書として分析されなければならない」と言った。

 少し難しい言葉だが、簡単にいえば、社会の変化は都市の変化として表れる、ということだ。社会の変化は目に見えない。けれども、それは都市の中に「見える形」で表れる、というのだ。

 カステルの考え方を応用するのならば、インターネットの浸透という目に見えない社会的な変化が、今、まさに現実の都市で可視化されはじめているといえる。

 それぞれの端末で「選択と集中」が起こっているように、ニセコをはじめとしたさまざまな場所で「選択と集中」された場所が生まれ、各々の属性における「テーマパーク」が生まれているからだ。まさにインターネットがもたらしている「分断」が、そのまま都市空間の「分断」として表れている。

 本記事では、こうした都市空間の変容を「ニセコ化」と呼ぶ。いわば、これは「SNS時代の都市論」とも言える。

 ここで改めてこの点を主張しておきたい。

 では、こんな「ニセコ化するニッポン」を私たちはどのようにして生きていけばいいのだろうか?あるいは、「ニセコ化するニッポン」でビジネスをしなければならない事業者はどのようなことを意識する必要があるのだろうか。