しかし、例えば「安売り」を軸にする飲食店が急遽こうした言葉を前面に押し出したブランディングを行ったところで、「そんなことより安く食べたい」というメインの顧客層の要望を無視してしまうだけだ。結果的に、顧客離れを引き起こす結果にしかつながらないだろう。

 SDGsに代表される「企業の社会的責任(CSR)」に対する要望は日に日に高まっているため、これらを無視することはできない。ただ、その中でも厳然たる事実として分断が深まっていることへの解像度を上げて、それに対処する必要がある。

声を上げるかどうかは
あなたの違和感次第

 最後は、(行動する)である。なぜカッコ付きかといえば、「知る」と「深める」の結果を踏まえて、行動しない、ということも1つの選択肢になるからだ。

 例えば、個人であれば分断を知るだけで、違和感が解消されスッキリするかもしれない。であれば、それで良い。一方で、分断によって明確な不利益を被っている人がいる場合は、それに対する対応が求められてくるだろう。

「キャッシュレスオンリーの店」が無意識に拡散している「静かな排除」と「社会の分断」『ニセコ化するニッポン』(谷頭和希、KADOKAWA)

 ただ、実はこうした問題はほとんど政治の問題へと移行していく。「ニセコ化」時代における公的機関の役割はこれまでとは変わっていくだろう。そのときに政治に何を期待し、何を要求していくのか、これは私の中でもまったく答えが出ていないけれども、考え続けるべきだと思っている。

 少なくとも、分断によって不当な位置に置かれている人がいて、それを看過できないのであれば、政治に対して声を上げていくことも1つの手段となるだろう。