
性的グルーミングの加害者は対象者と信頼関係を築いたのちにわいせつ行為に及ぶケースも多いという。加害者たちは、対象にどんな言葉をかけて手なづけるのか。犯罪心理学者の櫻井鼓氏が具体的なシーンをもとに紹介する。※本稿は、櫻井鼓『「だれにも言っちゃだめだよ」に従ってしまう子どもたち たくみに手なずける「ずるい言葉」』(WAVE出版)の一部を抜粋・編集したものです。
頭をなでられたくないのに…
相手の拒絶を認めない加害者

【シーン(16) 対面 (こちらが正しくて)君がまちがってるんだよ】
男性 なぜ頭をなでることがおかしなことだと思うの?
女の子 だって、人に触られたくないし……
男性 ほかの人はそんなこと言わないよ。ほめながら頭をなでるのは普通のこと。(じょうだん半分で頭を強めにたたく)君がまちがってるんだよ
女の子 でも……(私が気にしすぎているだけなのかな)
程度の差こそあれ、みなさんも子どものころから人とスキンシップを交わしてきたことでしょう。
海外の人に比べて、日本人はスキンシップが少ない傾向にありますが、それでも、仲良しのしるしとして手をつなぐとか、互いにがんばりをほめたたえるときにあく手をするとか、背中に手を置いて相手をはげますとか、悲しいときにハグし合う、ということがあると思います。
父親や母親と、ということもあるでしょうし、子ども同士でのスキンシップもあります。家族以外の大人と、ということもあるかもしれません。
シーン(16)にある、頭をなでられるというのは、その典型例でしょう。よくがんばった、などの言葉とともに頭をなでられる、という経験をした人は少なくないと思います。
でもこのシーンでは、頭をなでられた女の子がいやがっていますね。人に触られたくないと言っています。男性は、女の子を納得させるべく、頭をなでるのは普通のことだと重ねて伝えています。
さて、ほかの人は受け入れていることだから、よくあることだから、そして、性的部位ではないのだからと、他人に触られることは自然でしょうか。受け入れなければならないでしょうか。他人が触っていいかどうかは、どの部位であっても自分の身体なのですから、自分で決めていいはずです。