文春砲、調査報道、裏取り…などといった、それらしい言葉が飛び交っているので、スクープというものをかなり誤解をしている人も多い。だが、文春に限らずメディアの「スクープ」というものの多くは、「何かしらの意図をもった人によるリーク」だ。

 わかりやすいのは、永野さんと田中さんの不倫報道と同じ号に掲載されている『「私は闇献金をしてきました」石破首相“元側近”が週刊文春に告白する「3000万献金」《収支報告書不記載の疑い》』というスクープだ。

 この文春記事の後、石破首相は国会で「そのような事実はない」と否定。告発者の下根貴弘氏は国会内で記者会見を開いて、「石破首相は嘘をついている」と訴えた。ニュースでご覧になった方も多いだろう。

 ただ、永田町界隈において情報でメシを食っている人間たちはこの下根氏の告発にはかなり慎重な姿勢だ。まず、ご本人が会見で述べたように「証拠」がなく、全てはご本人の「10年以上前の記憶」に基づいた話ということがある。そして、なぜそのように根拠の乏しい話を、“このタイミングで”告発したのかという問題もある。
 
 ご存じのように、7月には参院選が控えており、野党だけではなく自民党内でも消費税減税をめぐって対立が起きている。石破首相にダーティというイメージをつけばポスト石破として注目が集まる自民党議員も少なくない。つまり、党内の権力闘争に利用される「紙爆弾」の可能性もあるからだ。

 なので、まともなテレビや新聞の政治記者ならば普通、下根氏からこの話を持ちかけられても報道はしない。

 先ほど申し上げたように「報道機関」というのは「中立公正」「人権の尊重」「社会の公器」を遵守しなくてはいけない。軽減税率や記者クラブ、放送法による許認可など政府からさまざまな優遇措置を受けているというアキレス腱もあって、特定の政治リークに乗っかることができない。今、ニュースにできているのは、文春が記事にしてくれて国会で質問されたからである。