そして、状況が変わりつつあるからこそ、輸入に頼らず自国でエネルギーを生み出すことができる「再エネ化」といった視点も必要になってきます。

 例えば、ウクライナ侵攻によるロシアからの天然ガス停止という事情もありますが、ドイツは2035年以降、国内の電力供給をほぼ完全に再生可能エネルギーによってまかなう方針を発表しています。

 一方、日本は石油や原発の燃料となるウランを海外からすべて輸入しています。このままではいつまで経っても他国にエネルギーを左右される状況は変わりません。

 インフレという状況を敢えて前向きに考えるなら、中東情勢がドラスティックに変わりつつある今こそ、日本のエネルギー問題を再考する好機とも言えるのではないでしょうか。足元の物価を気にする人は多いと思いますが、もっと遠くまで視野を広げないといけません。

 例えば、日本の周辺海域に大量に存在しているといわれる、メタンハイドレートという物質があります。天然ガスの主成分であるメタンガスが水分子と結び付いた氷状の物質で、「燃える氷」とも呼ばれています。メタンハイドレートを燃やした場合に排出されるCO2は、石炭や石油を燃やすよりも約30%少なく、次世代エネルギー資源として期待されています。

 ビジネスとして展開していくには、天然ガスを採掘する以上に高くなるコストをいかに抑えるか、メタンハイドレートの開発が環境にどのような影響をもたらすかといった課題もあります。しかし真剣に議論を進めていく価値は十分あるはずです。

 また、世界3位の資源量を持つ日本の地熱発電も大きな可能性を秘めています。地熱発電は、地熱が溜まっている層(地熱貯留層)に井戸を掘り、噴き出した蒸気の力でタービンを回すことで電力を生み出す仕組みです。

 実は、日本は早くから地熱発電機器の製造技術を確立し、世界における地熱用タービンの約7割は日本製です。それなのに、日本では地熱発電の開発が遅れています。