最も大きな理由は、地熱貯留層の多くが国立公園(国定公園)内にあることから、環境保護の観点から地熱発電所を建設しないことが決められていたからです。

 しかし、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故によって、エネルギーの在り方が見直され、現在は地元の同意を得ることができれば、国立公園内の約7割に当たる場所で地熱発電所の新設が可能になりました。世界3位のポテンシャルを秘めているわけですから、積極的に推進しない手はありません。

 国立公園内に地熱発電所が建設されることで、景観的観点から「ふさわしくない」という声もありますが、僕はアイデア次第だと思っています。

 日本同様に、火山大国であるアイスランドは、電力を100%自然エネルギーでまかない、そのうちの20%以上が地熱発電によって生み出されています。ヘトリスヘイジ地熱発電所やスヴァルスエインギ地熱発電所は、まるで美術館のような外観をしていて、レストランや温泉(ブルーラグーン)が併設されています。景観に溶け込むように設計され、観光地として確立されています。

 前述したドイツは、「国内の電力供給をほぼ完全に再生可能エネルギーによってまかなう」と謳っているものの、現在は石炭を利用してなんとかエネルギーをつくり出している状況です。対して、日本の場合、観光資源も兼ね備えている好立地に地熱発電所を建設することができるとも言えます。

 資源こそないけれど、豊かな自然に恵まれている。他国から見れば、うらやましくて仕方がないポテンシャルを持っている。だけど、生かし切れていない。本当にもったいないことをしている国ではないでしょうか。