まず、イスラム教の戒律が厳しいため、きちんとハラル認証を得るために製造ラインをハラル仕様に変えました。当然、そのためのコストが大きく膨らみます。お金と時間をかけたドレッシングを数百円で売ってしまうとリターンが少ない。おまけに、バリューのない新規参入商品が受け入れられる可能性も極めて低いと言えます。

 そこで、1本10万円のドレッシングというアイデアを思い付いたわけですが、普通のドレッシングが10万円で売れるわけがありません。日本の伝統工芸が好き、限定品が好き、見栄を張る、衝動買いをする。そうしたサウジアラビア人の特徴を考慮して、ドレッシングの瓶に「有田焼」を使用するというアイデアを思い付きました。

 有田焼の白い瓶に入ったドレッシングは、見た目にも鮮やかで高級感を演出するものでした。さらには、そのドレッシングの瓶のくびれた部分に、金沢の金箔を用いた24金を巻き、檜の箱に入れ、さらに西陣織りの帯で巻いてパッケージ化しました。ドレッシングの素材にもこだわり、キャビアやパールパウダーといった高級食材を詰め込みました。

 これをドバイで開かれる世界最大の食品見本市「ガルフード」に出品したところ、限定300本があっという間に完売です。

 アイデア次第で成功をつかむことができることが分かる、とても夢のある話ではないでしょうか。有田焼の瓶は、使用後に花瓶として再利用できます。きれいに洗って、薔薇を一輪挿してキッチンに置けば、とてもおしゃれなインテリアになります。

 そうしたライフスタイルまで提案して、彼は10万円のドレッシングを瞬く間に完売させたわけです。何より、中東の人々にも伝わるネームバリューを持つ有田焼、西陣織りといった要素を加えたことが、彼らの嗜好にマッチした。ゼロベースから販売せずに、知名度のあるものに乗っかろうという戦略は、中東でモノを売るときにとても大切な視点だと思います。

 そして、オリジナリティーも忘れてはいけません。ドバイで旅行会社を運営している僕の友人は、富裕層を対象にしたちょっと変わった日本のツアーを企画しています。