ドバイにはない体験を創出するような、日本の医療や美食だけに特化したプランです。例えば、雪に接する機会がない彼らのために、冬の北陸新幹線のグランクラス1車両を貸し切る。それで金沢に行き、美味しいものを食べてくる。ドバイの人たちは、「よい」と思えるものであればお金を使ってくれるのです。
日本にはたくさんの優れたものがあるし、世界的に大きな知名度を誇るものも少なくありません。日本人はついつい機能性を求めてしまう癖がありますが、海外、少なくても中東で求められているのは希少性です。
よく、「憧れの数値」=「知っている人の数」-「買える人の数」といわれますが、購買意欲は希少価値と直結します。中東では、プリウスよりも超高級なスポーツカーのほうが圧倒的に人気を集めています。どう考えても、プリウスのほうが機能的で利便性が高いですよね。
ところ変われば品変わる。他国でモノを売る、少なくても中東でモノを売るなら、どう特別感を持たせるかが大事です。ランドクルーザーが今なお高い人気を誇るのは、砂漠の中でも高い走行力を実現する唯一無二の存在だからです。
希少性というのは、「斬新なアイデアを生み出しましょう」ということとは限りません。すでにあるものが、中東においては「とても希少価値が高いもの・こと」に変わってしまう場合もあります。
僕がイラクに行ったとき、「日本の教育がうらやましい」と言われました。また、建設現場を訪れると、ものすごく危ない建て方をしていました。コンクリートもデコボコで、日本のようにきれいな壁面になっていないのです。
僕が、「左官屋さんはいないんですか?」と聞くと、イラクには教える人がいないと嘆いていました。「日本には高い技術があるから教えてほしい」と何度も言われたことを覚えています。医師にもかかわらず、アフガニスタンで用水路をつくり上げた故・中村哲氏は、現地では英雄です。
日本は、モノ作りの国として世界的な認知度があります。もちろん、安心・安全を担保した上での話ですが、僕たちが当たり前だと思っている日本の技術が世界のいたるところで求められている。この点において、僕は日本が中国や韓国よりも有利なポジションにあると思っています。でも、実際には動かない。その結果、中国や韓国に追い抜かれてしまいました。