
ステイホームが呼びかけられたコロナ禍、自宅で出来る新しい趣味に目覚めた人も多いのではないだろうか?『キングオブコント2024』王者・ラブレターズの塚本直毅もそのひとりだ。ハマったのは「ミシン」。10日で33着をリメイクするほどのミシン愛に目覚めた彼と、彼の家族との「ミシンの思い出」を紹介しよう。※本稿は、塚本直毅『コントとミシン』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
妻の出産準備中に
ミシンに目覚める
日増しに大きくなるおなかは、これからの生活の変化を予感させるものがあり、妻は「ここにベビーベッドを置いて、ここは衣装ラックにして……」と、もうすぐ生まれてくるわが子のために家の中を整理していた。
ふたりで過ごしてきた家に新たな命を迎え入れる準備が続くなかで、夫が突然、ミシンを買ってきた。このときの妻は、いったいどんな気持ちだったのだろうか。
「わが子のために裁縫男子に目覚めたよき夫」という、とても円満な想像もあるかと思う。しかし僕は、ミシンを買ってからの10日間で手持ちのTシャツを30着以上サイズアップするという、わがままなミシンに興じていた。
「相方のコロナ療養中に何ができるかな?」のアンサーとして、ミシンに没頭しただけだったのだ。
それまでも洋服に興味はあったが、それは人並みのもので、作りたい欲求とかミシンを買いたい衝動などはなく、正直な話、そんな自分だからこそ、急にミシンを始めることがお笑い的にヘンでおもしろいかな、という薄べったい魂胆だった。
そんなきっかけでミシンを始めた夫を妻がどう思ったのか、怖くていまだに聞けていない。