ANAのA380ANAのA380。初号機(手前)が青、2号機(真ん中)がエメラルドグリーン、3号機(最奥)がオレンジ、と1機ごとに色が異なる。機首の表情も正面を見る初号機、ほほ笑む2号機、まつげを描いた3号機と違いがある Photo by Tadayuki Yoshikawa

2007年初号機はシンガポール航空
エミレーツ航空が最終号機を受領

 総2階建ての超大型航空機、仏エアバスのA380が年内に最終号機のデリバリーを完了する見通しだ。同社がオーダーを受けた251機のうち、半数近い123機を発注した中東のエミレーツ航空が、最終号機を年内にも受領する予定だ。

 2007年10月にシンガポール航空へ初号機が引き渡されてから丸14年。旅客機は一般的に20年ほど運航され、機体によっては貨物機に改修されてさらに飛び続けることを考えると、14年で「完納」というのは短い。例えばボーイングの大型機777は26年前の1995年に初納入され、現在も引き渡しが続いている。

 日本では全日本空輸(ANA)が唯一、A380を運航する。3機全てが成田~ホノルル線専用の機材で、初号機は19年5月24日に就航した。コロナ禍に見舞われ遅延したものの、先月16日には3号機が成田空港へ到着して全機がそろった。ハワイで神聖な生き物とされるウミガメにちなみ「フライング・ホヌ(空飛ぶウミガメの意)」と名付けられ、全機がハワイの空と海、夕陽をイメージした特別塗装だ。

 ANAの前には、スカイマークがA380を発注し、ニューヨーク線を開設する計画だった。が、途中で頓挫し、15年1月に経営破綻する要因に。同社が発注したA380は2号機まで完成していた。

 後日、エミレーツがその2機を引き取り、2クラス615席仕様というファーストクラスのない機体になった。エミレーツのA380といえば、2階席先頭のシャワールームや後部のバーカウンターなど豪華装備が特徴だ。しかし、スカイマーク仕様ではこうした装備設計ではなかったため、2階席の床の強度が足りないなど構造上の関係で、ファーストクラスのない機体になったといわれている。

 機体の大きさゆえ、さまざまな話題を振りまいてきたA380。まだまだ飛び続ける機体もあるが、14年で完納という「短命」に終わったのはなぜなのか。米ボーイングとの戦略の違いや、航空業界のはやり廃りに翻弄されながらたどった“航路”を振り返ってみたい。