ANAの機体Photo:PIXTA

ボーイングとエアバスは航空機メーカーとして、ライバル関係にある。その競争は開発だけにとどまらず、受注においても熾烈を極める。今回は、エアバスによるボーイング切り崩しの事例を紹介しよう。※本稿は、江渕崇『ボーイング 強欲の代償 連続墜落事故の闇を追う』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

ボーイングの上客に向けた
エアバスの切り崩し

 旅客機には、機内に通路が1本しかないナローボディー(狭胴)機と、通路が2本あるワイドボディー(広胴)機の2種類がある。大きく分けてナローボディー機が小型機、ワイドボディー機が中・大型機という位置づけだ。

 ボーイングの場合、サイズが小さい順に「737」(2クラス構成で約130~200席)がナローボディー機で、中型機の「767」(約180~350席)と「787」(約250~340席)、大型機の「777」(約320~390席)、そして「ジャンボジェット」こと超大型機の「747」(約410~520席)の各ファミリーが、いずれもワイドボディー機となる。

 格安航空会社(LCC)の台頭や環境意識の高まり、原油高騰による航空会社の経営難といった事情から、航空機産業の主戦場は、小回りがきいて燃費性能に優れるナローボディー機となっていた。価格は安くて利幅は限られるが、売れる量は桁違いに多い。小型機の品ぞろえをどう充実させるかに、航空機メーカーと関連産業の命運がかかっていた。

 この日(編集部注/2011年7月20日)のニュースは何か。それは、アメリカン(編集部注/アメリカン航空)がボーイングの737シリーズだけでなく、欧州エアバスのライバル機「A320」シリーズも同時に買うと表明したことだ。アメリカン航空はそれまで、もっぱらボーイング機だけを購入するボーイングの上客だった。アメリカ最大手の航空会社の一角がエアバスに切り崩された瞬間だった。

 それでも、ボーイング側は安堵していた。A320だけではなく737シリーズも、引き続き買ってもらえることになったからだ。のちの737MAX事故(編集部注/2018年と2019年に起きたボーイング機の連続墜落事故)につながる火種が、そこには潜んでいた。

「エアバスに追いつけ」
そして生まれた事故機

 エアバスが2010年に発表したA320の改良版、「A320neo(new engine option)」は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏サフランによる合弁企業CFMインターナショナルが開発した大型で最新の「LEAPエンジン」を積んでいた。前世代機より燃料の消費を2割も減らせる燃費性能の高さから、LCCなどがこぞって注文した。