ところが、ロシア人だったら、白人系のアメリカ人かどうか見ただけではわからないので、お互い親近感を抱いて、つきあいやすい。見た目というのは大事なわけです。
第二言語習得の
達成度と人種の関係
筆者はアメリカの大学に留学していたとき、大学院生用の寮に住んでいたのですが、食堂で晩御飯を食べるときに、多くのアジア人は、いわゆるノンネイティブのアジア人──韓国人とか中国人──でそれぞれグループをつくっていっしょに座っていました。
それだけでなく、アジア系アメリカ人が、やっぱり自分たちだけでよく固まっていたのです。
残念なことに、第二言語習得の達成度と人種の関係はこれまでのところあまり体系的に研究されていません。しかしこれはおそらくかなり重要な要因だと思われます。日本語学習についてもそうです。

白井恭弘 著
いわゆる白人が日本語を学習するときと、日系ブラジル人が学習するときと、中国人が学習するときと、いったいどう違うのか。やはり、自分がネイティブスピーカーと一体感をもてるか、それがもてない場合にはどうか、というような問題を検討してみる必要があるでしょう。
話を元に戻しますと、もし、脳の生得的に決められた制約が臨界期の原因になっているのであれば、それは全人類に働くはずであって、アジア系だけに年齢の影響があって、ヨーロッパ系にはない、という現象は説明しにくくなります。
そうすると、ジアの研究の結果は、言語習得と年齢の関係に関して、いわゆる環境的な要因が重要で、脳による生得的な制約のような要素は関係がない可能性もあることを示していることになります。今後さらなる研究が望まれるところです。