教育写真はイメージです Photo:PIXTA

昨今、英語の早期教育を煽る風潮は珍しくない。しかし、実は脳が発達しきっていない乳幼児に二カ国語を覚えさせることは、一歩間違えれば脳の発達に悪影響を及ぼすリスクがあるのだという。我が子を自然な形で「英語脳」に導くにはどうすればよいのか、脳科学者である著者の成功体験を綴る。本稿は、成田奈緒子『子どもの隠れた力を引き出す 最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

乳幼児を英会話教室に
通わせるのを勧めない理由

 子どもに新しい刺激を与えたいと思ったとき、真っ先に浮かぶのは英語教育の必要性です。「子どもがグローバル社会で活躍できるように」と、早くから英語を学ばせようと考える親御さんは非常に多いものです。

「英語脳をつくるなら、脳が柔らかい3歳までに」「先取り学習で自信をつけさせ、学ぶ意欲を育てる」といったメディアの煽り文句を受け、まだ日本語もおぼつかない乳幼児を英会話教室に通わせる親御さんもたくさんいます。

 しかしながら、こうした言説は脳育ての理論からみると間違っています。

 脳科学の専門家として言えることは、バイリンガル教育は口で言うほど簡単ではないということです。むしろ、一歩間違えれば子どもの脳の発達に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 実際、私たちのもとにはバイリンガル教育に失敗した結果、子どもの脳が深刻な状態になってしまった親子がたくさん相談にみえます。

 少し専門的な話になりますが、Broca(ブローカ)野という前頭葉の言語機能を司る場所があります。幼少期から母語と第2言語に接してきてうまくバイリンガルに育った人の脳では、2つの言語を司るこのBroca野の領域がより接近している、つまり2つの言語を極めて自然に行き来して使えるようになることが証明されています。