「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

「ちゃんと」はよくない言い方
皆さんも職場で、次のように仕事をお願いしたりしていないでしょうか。
実はこのお願いの仕方は、非常に良くないです。
なぜなら、解釈の余地があまりに大きいからです。今回は、これについて考えていきましょう。
「ちゃんと」では意図が伝わらない
そもそもですが、皆さんにとって、ちゃんと何かをするというのは何でしょうか。例えば、「ちゃんと部屋を掃除しといて」と家族の誰かから言われたら、あなたはどこまで掃除をするでしょうか。
きっと様々な人がいると思います。例えば、次のような例です。
②とりあえず掃除機をかける
③棚の上などを濡れ布巾で掃除する
④棚などを全部どかして、大掃除のように徹底的に掃除する
いかがでしょうか。①~④まで、程度の差はあれ、それぞれ一応掃除はしていますよね。
ここでお気づきの方もいるかもしれません。実は「ちゃんと」の問題点は、人によって意味が全く異なっているということです。
1番から4番まで、それぞれの人にとっての、「ちゃんと掃除している」を行動に移してはいますよね。しかし、この解釈のずれが、大きな問題になってしまう可能性があります。
「一般化された言葉」は危険
つまり、「ちゃんと」では、あなたがどれくらいしっかりその仕事をしてほしいのかが、全く伝わらないのです。
例えば、先ほどの掃除の例を仕事に置き換えてみると、あなたが4番くらいの、「年末の大掃除くらいに掃除をする」レベル感をイメージしていたのに、部下に伝わったのが1番の「部屋のモノを片付ける」イメージ感だったとしたら、仕事上で何が起きるでしょうか。
おそらく、あなたが「ちゃんとやって」と言ったのに、部下が全然「ちゃんとやっていない」という事象が起きると思います。これが、解釈のずれが問題を生むメカニズムです。
しかしこれは、「ちゃんと」という言葉を使ってしまった以上、仕方のないことです。なぜなら、「ちゃんと」という一般化された言葉は、人によって解釈が異なるので、全く一致しないからです。
これを解決するためには、互いに答えが1つに絞られる「事実」を使って、指示をする必要があるのです。
(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する書き下ろし原稿です)