
漫画『サザエさん』『釣りバカ日誌』『こち亀』『美味しんぼ』に登場する、働かないおじさんたち。仕事もほどほどにして趣味に勤しむ彼らは一見、職場のお荷物のような存在に見えるが、実はそうとも限らない。昭和的な彼らの“ゆるい”働き方を紐解くと、令和の今にも通じる、「組織に必要とされる能力」の本質が見えてくる。※本稿は、侍留啓介『働かないおじさんは資本主義を生き延びる術を知っている』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
地位は低いが楽しそうな
昭和の漫画の主人公たち
「待遇はそれほどよくないが、楽しい立場」にある従業員の人を探していくと、浮かんでくるのは、昭和を象徴する漫画の登場人物たちである。
『美味しんぼ』(原作・雁屋哲/作画・花咲アキラ、小学館)の山岡士郎、『釣りバカ日誌』(原作・やまさき十三/作画・北見けんいち、小学館)の浜崎伝助=浜ちゃんなどだ。山岡は東西新聞社文化部の記者、浜ちゃんは中堅ゼネコン会社・鈴木建設の一ヒラ社員という設定である。ともに、堅実な経営基盤を持つ、安定企業に勤務している点が共通している。
さらに、山岡も浜ちゃんも、会社での仕事にはあまりやる気がなく、勤務態度も悪いが、そのかわり一芸に秀でており(山岡は食に対する知識や能力、浜ちゃんは釣りのスキル)、結果としては会社に貢献するストーリーとなっている。
上司からはしょっちゅう「おまえはクビだ」とどやしつけられているが、いないと困るので、実際には解雇されずに済んでいるという点も、2人の共通点だ。