プロ野球の投手を例に取るとわかりやすい。中継ぎ投手で2年以上活躍できる投手は稀である。一芸に秀でている人こそ、消耗も早く、対策も立てられやすい。スキルが高いからこそ切り捨てられるのも早い。ビジネスでも、単に高いスキルを提供するだけなら、外注で十分である。

 ひと昔前なら、「英語が話せる」という技能だけでも切り抜けられたかもしれないが、今では通用しなくなっている。会計やITなどのスキルも、ただそれだけの人であれば街中に溢れている。もっとも、地方ではまだ重宝される場合もあるかもしれない。

上司へのゴマすりは
時代を超えた「能力」

「なにか」とは、むしろ、21世紀のビジネスに「こんなものは必要ない」と言われてきたような「なにか」である。

 たとえば山岡や浜ちゃんは、人脈が充実している。人脈を通じて、自分の知識や経験を共有し、さらに人脈を拡げていける点が強みとなっている。こうしたネットワークの輪を拡大しつづけ、しかもその輪の中心に座り続けることができるのである。そして彼らは、やる気がないから転職することも会社を裏切ることもない。雇用する会社側から見ても、簡単には転職しない彼らのような人材は、雇い甲斐も育て甲斐もあるのである。結局、彼らは、ある局面では活躍してしまう存在なのである。

 このような「昭和のおじさん」的なスペックや能力には、思いのほか、時代を超えた「なにか」があるのではないかと私は思っている。たとえば「ゴルフ人脈」、あるいは「上役にひたすらゴマをする能力」はどうだろうか。ゴマすりで出世し、確固たる地位を占めている人は、意外と多い。

 私は、これまで何千という企業のトップや経営幹部を実際に見てきたが、高い実績と能力を正当に評価されることは、むしろ珍しい。実績を持っている人間は、かえってやっかみを受けたり、攻撃の対象となってしまうので、結果として出世していないケースが多いように感じる。

 逆に、実力主義とみられる外資系企業やIT系企業などですら、「どうしてこういう人がこの会社に雇われているのだろう」と不思議に思うようなタイプの従業員と出くわすことが少なくない。特別なスキルはあまりなさそうに見えるが、活躍している。彼らの何が評価されているのかと言えば、マインドセットである。