現在、地方では、驚くほど人材が不足している。だから、東京では二軍、三軍程度の実力しかない人でも、地方に行けば重宝がられるということは十分にありうる。そういう意味で、「都会から地方へ」という従来とは逆のルートを辿ることは、1つのチャンスとなりうるかもしれない。日本にいると感じにくいかもしれないが、日本は各地域で文化も産業も特色も異なる。そして長い歴史のある、世界でも珍しい国である。日本経済は大都市のみで成り立っているわけではない。実業家の冨山和彦も、グローバル経済圏とローカル経済圏とを対比させて、ローカル経済圏が活気づいてこそ、日本経済全体が復活するのだと説いている(注3)。

 大企業から中小企業に移ることも逆張りとしてありえる。私はコンサルタントとしては大企業を、投資家としては中小企業の経営を支援してきた。現場最前線の中小ビジネスに、大きな飛躍の可能性を感じている。

 また、多少言葉は悪いが、「勤務先のランクを少し下げる」ことも有効な選択肢である。こうした動きは、コンサルや投資銀行、あるいは弁護士事務所などでは多く見られる。コンサルに関して言えば、大手ファームのマネージャーくらいで退職した人が、準大手やブティックファームのパートナー(経営者)として活躍する事例はよくある。

 あるいは日本企業から外資系へ、伝統企業からスタートアップへ、というこれまでの転職とは逆方向の動きが出てきてもよい。IT企業で働いていた人が、仮にエンジニアとしては半端なスキルしか持っていなかったとしても、体質の古い日本の会社に移ると、「君、すごいね」と評価されるケースも今後増えてくるであろう。

注3 『なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略』冨山和彦、PHP新書、2014年