「ストレスを感じなくなる最高の呼吸法とは?」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

【精神科医が教える】ストレスを感じなくなる「最高の呼吸法」とは?Photo: Adobe Stock

心が軽くなるために深呼吸

 仕事や日常でストレスがたまってついついピンッと緊張の糸が張って、無意識に呼吸が浅くなっていませんか?

「たかが呼吸」と侮ってはいけません。
 呼吸は心身と深く結びついていて、ときにメンタル不調時に「深呼吸」を行うことが大きな助けとなってくれることがあります。

 最近イライラしているな、モヤモヤがとれないと感じているときこそ有効なので、心を軽くするための「自然な呼吸」について、今日は共有したいと思います。

なぜ呼吸を意識することが大事なのか?

 人間はストレスを感じていると、緊張して交感神経という自律神経系が優位になって、無為騎士的に呼吸は浅く速くなってしまいます。

 これは心身の緊張を高めて周りに警戒しやすく咄嗟の危険から身を守りやすくなる一方で、交感神経の優位が続くと不安感を増幅させてメンタルを不安定にさせてしまうこともあります。

 そんななか、意識的な「深呼吸」をすることは、緊張しっぱなしの交感神経系優位の状態から、リラックスモードの副交感神経を活性化させ、心拍数や血圧を落ち着かせ、心身の緊張を和らげてくれる効果があるとされています。

 これは深呼吸が迷走神経を刺激するためで、ちょっと気が緩んだ時についつい深く呼吸して気持ちが落ち込むように、ストレスを軽減してくれる効果があるのです。

さらに効果を高めるためには?

 この深呼吸の効果は、自然環境のなかで劇的に高まることが示されています。

1. 五感が癒やされる森林浴効果:森林浴はストレスを軽減して、副交感神経を優位にすることが複数の研究で報告されています。樹木が発するフィトンチッドという香り成分や、清浄な空気を取り込むことでより効果的になります。

2. 心を鎮める自然の音と色彩:川のせせらぎや鳥の声、風の音など、自然界の音には心を落ち着かせる「1/fゆらぎ」のリズムが含まれると言われます。また、緑豊かな景色は視覚的にも安らぎを与えてくれるので、五感を感じながらの深呼吸はより特別なものになるでしょう。

3. 脳をクリアにする効果も:日常から離れ、非日常の自然の中で過ごすことは、注意力の回復や創造性向上も期待されるとされています。ずっと机にしがみついているとアイディアがなかなか浮かばないように、あえて都会の喧騒から離れ、穏やかな自然の中で深呼吸をすれば、脳へのリフレッシュも促され、思考がクリアになるのを感じられるでしょう。

 これらの影響はごく一部で、自然のなかで深呼吸をすることは、ストレスを相乗的に顕著に低下させ、気分改善や集中力向上に貢献します

「自然の中での自然な深呼吸」は、心身の回復力を最大限に引き出す、手軽で強力なセルフケアなのです。

「自然×深呼吸」実践のヒント

 そんな自然な呼吸法は、忙しくて自然に触れられない日常でも実践する方法はあります。
 難しく考えず、以下の方法を日常に取り入れてみてください。

・基本は腹式呼吸:鼻からゆっくり4秒かけて息を吸い、お腹を膨らませます。2~4秒息を止め、口からゆっくり6~8秒かけて息を吐き出し、お腹をへこませます。「吐く息」に意識を向けるのがポイントです。

・身近な自然でOK:公園や近所の空き地、街路樹など、日常の中に小さな自然を取り入れるだけでも人間は自然から癒し効果を得られることがわかっています。少し窓を開けて新鮮な空気を感じる、あるいは通勤途中の緑道で少し立ち止まって。数分深呼吸をするだけでも効果があるでしょう。

・五感をフル活用:深い呼吸は口だけでなく全身で感じることが効果的、深呼吸をしながら、頬をなでる風、木々の香り、鳥の声、葉の緑など、周囲の自然を意識することで、より一層効果を高めることにつながります。

いまの自分に身をゆだねて

 心が疲れたと感じていたら、ちょっと意識的に自然に足を止める時間を作って、深く呼吸をしてみましょう。

 それは壮大な草原や森林浴でも良いですし、近所の公園や緑の多い場所へ足を運んでゆっくり深呼吸するだけで大丈夫です

 特別な道具も時間も必要ありません。
 自然の穏やかなリズムに自分の呼吸を合わせるそのひとときが、あなたの心に静けさと活力を取り戻し、日々のストレスを洗い流してくれるはずです。

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。の著者・精神科医いっちー氏が書き下ろしたものです。)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。