「最近どう?」の問いかけは、ザツすぎる悪手
佐渡島:ちなみに僕は、若い頃から「会議でたくさん発言する」ことこそが、場を活性化させると感じてきました。その成功体験を、若い世代にも伝えたいと願ってしまっていた。でも、それが間違っていた可能性があるということですね。
中田:残念ながらそうなんです(笑)。
佐渡島:まだ会社規模が小さかった頃、僕は社員とよく「1on1」をやっていたんです。ちょうどGoogle社が、「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という調査結果を出したころで、いろんな組織で「心理的安全性」のキーワードが語られ始めていました。
「心理的安全性」を引き出すための3つの質問というのもあるんです。「最近どう?」・「あなたが困っていることは何ですか?」・「何かサポートできることはありますか?」というもの。僕も散々使ってきました。ところが中田さんの本を読むと、これらはみんな、絶対にしてはいけない「悪い質問」だと書かれている(笑)。
中田:はい、これも残念ながらそうですね(笑)。
「なぜ」を安易に投げかけてはいけない
中田:それ以外にも、「『なぜ』を5回繰り返して聞け」というのもありますよね。でも、それも間違い。いわゆる「5W2H」(What、When、Where、Who、Why、How、How much/many)の疑問形がありますが、そのうちの「どう(How)?」と「なぜ(Why)?」は、気軽なおしゃべりなどではいいのですが、こと相手との距離を縮めるための「対話」には向いていない。使いやすい言葉ですが、だからこそ安易に投げかけてはいけない質問なんです。
佐渡島:でも、きっと日本中、至るところで、上司が部下に、先輩が後輩に、大人が子どもに、「最近どう?」と聞いていると思うんですよ。「何か問題はない?」と。その結果、「うん、大丈夫」「特に問題はありません」と返されて、問題はないんだと安心していたところ……、数ヵ月後には「会社、辞めます」と転職されたり、「学校を休みたい」と不登校になったりしている……。これって結構、こわい現象ですよね。
仕事を教える上司の愛は「詰め」に代わる
中田:以前、知人の若手社会人が面白いことを言っていました。彼は転職前の上司に、「仕事を覚えろ」と圧をかけられ、ゴリゴリに詰められていたそうなんです。でもこの上司、終業後に飲み屋に行くと、すごい優しくしてくれる。このバランスの悪さに居心地が悪かったそうです。どちらが本当の顔なのか謎だったと。でも、転職後、しばらくして気づいたそうです。もしかしたら、あれはどちらも上司からの「愛」だったんじゃないかと。
佐渡島:あ~、可愛い新人に仕事を覚えてもらいたくて、一生懸命伝えてきたことが、相手にとっては「圧」と感じられていたという不幸なすれ違いですね。耳が痛いです。自分も含めて昭和型の人間の「愛」は、令和の若者には通じにくい。相手にうまくいってほしいと願うからこそ、自分の知見や成功体験を伝えなきゃと思うわけです。