「本音で話してよ」と聞く人は嫌われる。頭の良い人は、どう聞く？＜コルク佐渡島庸平×中田豊一特別対談＞

「『本音で話して』は、絶対にNGです」
「自分は若手とコミュニケーションが取ってきたから大丈夫」「意識して対話の機会も持ってきた」、そんな自信たっぷりな上司や先輩こそ要注意。もしかしたらあなたのその“質問”をきっかけに、陰で周囲に「上司に詰められた……」「先輩から圧をかけられた……」と不満を漏らされていることがよくあるのだ。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』で「賢い質問の方法」＝事実質問術を紹介している著者であり、40年超にわたって開発途上国支援の現場で実践と観察を積み重ねてきた中田豊一氏と、数々のヒット作品を世に送り続けてきた編集者、コルクの佐渡島庸平氏が「相手と自分の関係が悪くなる対話例」について語り合う。（取材／ダイヤモンド社・榛村光哲、構成・執筆／三浦愛美）

上司の「本音で話して」に、ホンネを語る若手はいない

佐渡島庸平（以下、佐渡島）：中島さんの『「なぜ」と聞かない質問術』（ダイヤモンド社）、発売当日に購入して、一気に読みふけりました。眼からうろこがぽろぽろ落ちて、感動しまくりでした！

中田豊一（以下、中田）：天下の佐渡島さんにそう言っていただけると、ちょっと自信がつきます（笑）。

佐渡島：いや、ほんと、これまでの自分の“対話”はいったい何だったんだと。過去やらかしたコミュニケーションの失敗例が、走馬灯のように脳内を駆け巡りましたよ（笑）。

中田：この本は、私の師で盟友でもある和田信明さんが編み出した「メタファシリテーション」をベースに書き起こしました。言語も文化も全く異なる世界で、神かがったコミュニケーション能力を発揮していた和田さんの対話力を分析・言語化したものです。

佐渡島：異国での対話方法が、地球をグルリと回って日本社会でも役立つというのは不思議な気がしますが、実際、この本は、ビジネス現場だけでなく、教育現場や子育てなど、あらゆる場面で非常に役立つと感じました。

立場が上の人間による「一方的な勘違い」

中田：それは「対話の非対称性」が似ているからだと思います。いくら「本音で語ってほしい」と申し出ても、表面上の会話に留まってしまったり、忖度や遠慮が生じてしまったり。でも、考えてみれば当たり前なんですよね。なぜなら、どこまでいっても僕らは「援助をする側」で、彼らは「援助を受ける側」だから。なかなか「イコールの関係性」にはなりにくい。彼らは要望を出しますが、決定権は全てこちら側にある。バランスは均等ではない、つまり非対称なのです。

佐渡島：それと同じことが、日本のビジネスや教育の現場でも起きていると。

中田：いくら上司や大人が、「これは説教ではなく、対等な対話だよ」とアピールしても、部下や子どもは素直にその言葉を信じられません。いくら「対話をしている」と感じても、多くの場合、それは立場が上の人間による一方的な勘違いなんですよ。

佐渡島：のっけから脳天をガンガンやられています。だってそれ、僕が長年やってきたことだから（笑）。会社の新入社員や若手の部下に対しても、わざとフランクな口調で、「思ったことを伝えてよ」とやってきた。でも、それは一方的なアピールだったかもしれないということですよね。