「良かれと思って」の親心がパワハラに!?

佐渡島:例えば、「部活でしごかれて強くなった」人は、部下や後輩も「しごいてあげないと失礼だ」と思っちゃう。それがビジネスの現場では、「部下が気づいていないところも細かく指摘してあげる」といった行動につながる。ただ、そうした「良かれと思う」親心、先輩心は、相手からすると、ただの嫌がらせやしごき、下手をしたらパワハラだと受け止められてしまう危険性もある。

中田:そのすれ違いを避けるためのヒントを、本著でお伝えしています。特に、先輩や上司は、極力「なぜ(WHY)?」と聞いてはいけない。「どうして遅刻したんだね?」「なぜ、そう思った?」「どうしてこんなミスをしてしまったんだと思う?」。どれもこれも、相手に気づいてほしくての「なぜ」ですが、相手には「詰問」の連発にしか聞こえないからです。

佐渡島:中田さんは、「答えが言い訳になってしまう質問はするな」とおっしゃっています。たしかに、愛情から出た「なぜ?」も、相手からすれば「言い訳」が続くようになると、どうしても形勢不利の実感を抱いてしまいます。

中田:そうなると、やはり「イコールの関係性」にはなりにくい。つまり「対話」にならない。やはりそこは「愛情があれば、どんな質問をなげかけてもいい」わけではないんです。いくら「良かれ」と思っても、その愛情が相手に伝わらなかったら意味はありませんから。

(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する対談をまとめた特別な記事です)